気象集誌. 第2輯
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MUレーダによって観測された下部成層圏の内部慣性重力波と慣性波の特徴
牛丸 真司田中 浩
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1990 年 68 巻 1 号 p. 1-18

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抄録
上部対流圏と下部成層圏の内部重力波の一般的な特徴を明らかにするために、MUレーダによる約5日間の連続観測を、それぞれ1985年および1986年の9月に行った。データのホドグラフ解析、鉛直および時間方向の回転スペクトル解析の結果から、この高度範囲での内部重力波に関して次のことが明らかになった。(i)対流圏界面直上の下部成層圏には、鉛直波長1~2.5km、水平波長約200km(110~330km)、振幅数ms-1、水平位相速度約3ms-1の飽和しながら上方に伝播する、準単色波的な慣性重力波が全観測期間を通して存在する。その鉛直波長および振幅は高度と共に減少し、高度19km付近のJones'criticallevelで波は消滅する。(ii)東西風転移高度(20~21km)の近傍には鉛直波長約2km、水平波長約1000km、振幅約3ms-1の上方伝播する慣性周期に非常に近い周期を持つ慣性重力波(慣性波)が、対流圏界面直上の慣性重力波と分離して存在する。
また、解析によって得られた波のパラメータを基に慣性重力波と慣性波の伝播と起源について考察した。その結果、群速度の評価から、慣性重力波は平均風にほぼ凍結された水平伝播をしており、MUレーダサイト(34°51'N,136°06'E)の高度17km付近で観測される慣性重力波は、レーダサイトの西側1000km以上離れた対流圏上部から到達していると推定される。また子午面内のray tracingによって、慣性波は熱帯地方の上部対流圏から1週間程度かかって伝播してきたことが示される。
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