気象集誌. 第2輯
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弱風晴天日の中部日本域における日中の昇温過程(その2)
地表面熱収支、混合層高度および地表面湿潤度
桑形 恒男益子 直文住岡 昌俊近藤 純正
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1990 年 68 巻 6 号 p. 639-650

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抄録

ルーチン観測データを用いて、春期の弱風晴天日における中部日本域(東北•関東•中部地方)の日中の大気一地表面問エネルギー交換過程について解析した。
まず混合層の厚さの地域分布を解析した。下層大気の昇温にともなって対流混合層が発達し、その厚さは昇温量の増加にともなって増大する。すなわち昇温量が大きな内陸盆地(盆底)や内陸平野部では混合層は厚くなり、逆に昇温量が小さな沿岸部や山岳域では混合層は薄くなる。しかし山岳域では地表面の海抜高度が高いので混合層上端の海抜高度は高い。そのため混合層上端の海抜高度は沿岸部から内陸部に向かって単調に増加する。
次に中部日本全域を11の小領域に分割し、各小領域における大気一地表面間の熱収支を評価した。各小領域ごとの熱収支にはあまり大きな差はないが、関東地方では他の領域と比較して顕熱がやや大きく、潜熱(蒸発量)がやや小さいという結果が得られた。これは、関東地方が他の領域に比べて都市部の占める割合が大きく、逆に植生地の占める割合が小さいということに起因している。なお中部日本全域で平均したボーエン比(=顕熱/潜熱)は1.03となった。またこの熱収支解析結果を用いて地表面湿潤度(蒸発散能係数または蒸発散効率と呼ぶこともある)βを求めたところ、中部日本全域平均でβ=0.29が得られた。各小領域ごとのβは0.16~0.46の範囲に分布していた。

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© 社団法人 日本気象学会
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