気象集誌. 第2輯
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北陸地方における雷雲の発雷に関連するレーダエコーの研究
Part I:夏および冬季の雷雲に関する観測および解析結果
道本 光一郎
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1991 年 69 巻 3 号 p. 327-336

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抄録
北陸地方において、発雷に関連するレーダエコーの上昇•下降を夏•冬の両季節について、CAPPI(定高度PPI画面)から得られるエコーパタンと空電方向探知機によって得られる空電(雷放電電波)のデータをもとに解析して調べた。並から強の降水域のエコーセルを数個含むマルチセル型の雷雲を、小松空港およびその周辺に設置されている波長5.7cmの通常型気象レーダと受信周波数100.5MHzのVHF波空電方向探知システムを用いて観測し、次の結果を得た。
1)一連の雷放電の最初の発雷は、雷雲中の反射強度が30dBZのエコーが-20°C高度を越えてさらに上昇して、数分後(5分後程度が最も多い)に観測される。
2)初回発雷直前のエコーの平均上昇速度は、夏冬ともに同様な傾向を示した。しかし、発雷しない対流雲の平均上昇速度はかなり異なった様相を呈した。すなわち、冬は各エコー強度とも発雷雲と同様な上昇速度であったが、夏の場合には20および25dBZのエコーは非常に大きな速度で上昇するが、30および35dBZのエコーの上昇速度は発雷雲と比べると、同じかまたは小さい値であることがわかった。
3)非常に強い放電活動をもたらした雷雲では、夏の場合20から35dBZのエコーが非常に大きな上昇速度を有し、40と45dBZのエコーはさほど大きい上昇速度を示さないことがわかった。一方、冬の場合は夏とは逆で、弱いエコーはほとんど上昇せず、並~強のエコーが急激な上昇をすることがわかった。
4)夏•冬ともに雷放電活動のピークは、45もしくは50dBZのエコーセルが先ず-10°C高度に数個形成されて、その後0°C高度へ下降しながらやはり強いエコーセル群として出現する間に起きていることが確認された。Takahashi(1984)は数値計算によって合理的な雷雲のモデルを樹立し、雷雲セルのライフサイクルに対応する対流活動、電気的活動の推移を明確にした。レーダ観測と空電受信による今回の観測結果は、Takahashiのモデルが大筋に於て、北陸地方の雷雲にあてはまることを示すと考えられる。
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© 社団法人 日本気象学会
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