抄録
5日平均GMS上層雲量(1°×1°メッシュ)データ(1978年4月から1989年12月)を利用して東アジア・東南アジア・西太平洋上における夏のモンスーンの開始と季節変化を調査した。夏のモンスーンに伴う雲はITCZによる熱帯モンスーンと、梅雨前線による亜熱帯モンスーンに分けられる。熱帯モンスーンに伴う雲は、5月に東南アジアで増加し、雨期が始まる。その後、6・7月にかけて数回の急速な北上で南シナ海・西太平洋上に広がる。
梅雨の走りは4月26日以降に日本のすぐ南方の30°N付近で寒帯前線帯の雲量の増加として始まる。5月16日ごろからこの雲ベルトは南下し20-25°N付近で雲が急速に増加し、沖縄で梅雨が始まる。6月5日-9日ごろこの雲は急速に北上し、日本で梅雨が始まる。7月に入ると梅雨は黄海・朝鮮半島に北上する。
これらの雲量の急速な変化は30-60日及び20-25日の周期の季節内変動と、60日以上の周期の季節変化の位相の同期によると考えられる。東南アジア・西太平洋上では広大な海洋のため降水量による雨期の開始(終了)の日付の調査は十分でなかった。しかしGMS上層雲量データによる調査によってこの地域での雨期の開始から終了までの季節変化が明らかになった。