気象集誌. 第2輯
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冬季の海上の層積雲の構造と反射率
菊地 勝弘遊馬 芳雄谷口 恭菅野 正人田中 正之早坂 忠裕武田 喬男藤吉 康志
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1993 年 71 巻 6 号 p. 715-731

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抄録

冬季の海上の層積雲の雲頂の構造と反射率の関係を調べるために、航空機によるステレオ写真観測法を使った観測が1989年1月から1991年1月にわたって、日本海の若狭湾沖および奄美諸島周辺の太平洋上で行われた。
最初に、雲頂高度と反射率との間の関係が調べられ、両者の間にはかなりよい相関が認められた。特に奄美諸島周辺での観測では高い相関が認められた。次にCloud area ratio(雲の領域率)と雲頂の反射率との関係が調べられた。その結果、低い反射率の雲域では雲頂高度が比較的低くて雲層が薄く、また、その高度差は大きく、雲頂の形状は鋸の歯のように鋭かった。一方、高い反射率の雲域では雲頂高度が高くて雲層が厚く、そして一様で形状は平で台形のような形をしていた。
しかし、奄美諸島北部の例では、雲頂高度が他の2例に比して低く、しかも最高雲頂高度と最低雲頂高度との高度差が400m以上もある層積雲であったにもかかわらず、その反射率は比較的高かった。この反射率の違いはliquid water pathの差によるものと推定される。

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