気象集誌. 第2輯
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GFDL "SKYHI" 大気大循環モデルとFGGEデータセットに現われるケルビン波と混合ロスビー重力波 : それらの生成メカニズムとQBOにおける役割
林 良一Golder D.G.
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1994 年 72 巻 6 号 p. 901-935

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抄録
赤道ケルビン波と混合ロスビー重力(MRG)波のシミュレーションと理論を評価するため、またそれらの生成メカニズムと準二年周期振動における役割への洞察を得るため、時空間スペクトル解析を40層、緯度3度、経度3.6度のGFDL "SKYHI"大気大循環モデルからのoutputデータとGFDL FGGEデータセットに行った。SKYHIとFGGEの成層圏ケルビン波はともに、下部成層圏において東進、波数1、10-20日周期成分が卓越する。これらの波は高い波数-振動数成分を伴っており、これらは下部成層圏よりも上部成層圏において明瞭に検出される。一方、SKYHIとFGGEのMRG波は、西進、波数3-5、4-6日成分が下部成層圏で卓越する。上部成層圏においてこれらの波は、さらに低い波数(1-2)、短い周期(2-4日)成分が卓越する。SKYHI/FGGEケルビン波とMRG波の振幅は、観測された(非FGGE)地点データから見積られるものに匹敵するが、SKYHIモデルは弱い準二年周期成分しか生成しない。SKYHI降水データは降水のグリッドサイズのパルスを断続的に示すが、ケルビン波とMRG波に対応する明瞭なスペクトルピークを示さない。本解析に基づき、ケルビン、MRGおよび重力波は、波-対流相互作用の結果生じ、対流加熱のランダムパルスにより断続的に引き起こされるという生成機構を提案する。準二年周期振動は重力波によって第一に生成され、モデルにおける水平分解度が増すと対流加熱のグリッドサイズパルスと小規模重力波が適宜生成されるので、振幅が増大すると考えられる。
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© 社団法人 日本気象学会
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