気象集誌. 第2輯
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水温躍層調節とENSO位相変化における北西太平洋風変動の役割
Bin WangRenguang WuRoger Lukas
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1999 年 77 巻 1 号 p. 1-16

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抄録
17年間分(1980-1996)の熱帯太平洋水温躍層の解析は、1990年代初期の変動が短周期(約18ヵ月)で南北スケールも比較的に小さいのに対し、1980年代ではENSOの大規模な変動と関連し周期は長く(4-5年)南北スケールはより大きいことを示している。水温躍層深度の経年変動の卓越モードは、近似的には遷移期に赤道ウェーブガイドに生じる水温躍層深度東方伝播を伴う東西のシーソー振動で表現される。
大規模で長周期のENSOは、北西太平洋(NWP)(5-15°N,130-170°E)の貯熱量の実質的な変化を伴う。水温躍層変位とNWPにおける風カールの変化傾向は8-20ヵ月の幅広いスペクトルピークをもちコヒーレントである。水温躍層の下降(上昇)は局所的な高気圧性(低気圧性)風応力と同位相であり、この事実は水温躍層調節においてその場での風強制が本質的である事を示唆している。
西太平洋の海上風の変動がENSOサイクルの位相変化に重要な役割をはたしていることを提唱する。暖かい時期の完熟期に、WNPの高気圧性風応力カールが急速にできあがる。それがWNPの水温躍層を深めることにより、ウォームプールでは熱を再び溜め始める。その間に高気圧の南側の東風アノマリーが赤道太平洋西部の水温躍層を押し上げて、赤道に沿う浅い水温躍層の東方伝播の引き金となり、その結果東部の低温下を導く。冷たい時期に於ける完熟期での降温から昇温への転移は、同様の過程によるが偏差の符号は逆である。
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