1999 年 77 巻 6 号 p. 1151-1160
Cane-ZebiakモデルのSST収支を解析することによってENSOの反転と成長のメカニズムを診断的に調べた。ENSOの位相遷移と成長に直接関係したSST変化率は二つのプロセスに帰する。すなわち、平均湧昇流による亜表層水温の鉛直移流(温度躍層フィードバック)と東西流アノマリによる気候平均SSTの東西移流(東西移流フィードバック)である。ENSOの位相遷移と成長に対する寄与は赤道温度躍層深度アノマリと東西流アノマリを東西平均場と東西偏差場に分解することによって系統的に分離することができる。東西平均温度躍層深度アノマリと関連した温度躍層フィードバックと赤道東西平均東西流アノマリによる東西移流フィードバックがENSOの位相遷移をもたらしていることがわかった。また、東西偏差場と関連したこれらのプロセスはENSOの成長に寄与している。SST変化における二つのプロセスはほとんど等しい重要度でENSOの位相伝播と成長に寄与している。さらに、温度躍層の南北傾度と東西流との間の地衡流平衡の結果として両プロセスは密接に関連している。これらの知見はCane-ZebiakモデルにおけるENSOの概念的理解には両プロセスが含まれるべきであることを示唆している。