内観研究
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特集「死をみつめて生きる」
タナトロジーと内観
草野 亮
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2001 年 7 巻 1 号 p. 3-9

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抄録

 タナトロジーThanatologyは、ギリシヤ語のタナトス (死) とロゴス (学問) の合成語であり、哲学や倫理学、宗教学、医学、心理学など多様な角度から、人間の死をめぐる問題について考察する学問である。死をみつめることによって、与えられた時間が限られていること、毎日をどう生きて行ったらよいかを深く考える。吉本伊信は「死をとりつめて内観せよ」と常にいっていた。「人生の目的とは?」は永遠の課題であるが、善い死を目標とすることであるという。それによって生が輝きを増す。死に直面した人々の手記には光の記述がみられる。意識の急激な組み替えが起こると光を見るという。深い内観における光への感動もそれに近い。われわれの身体内の新陳代謝や精神現象も、宇宙の法則の中において必然的に営まれている。内観はそれらの声を聞く作業である。生が自然のものなら死もまた自然のものであろう。その行き着く先は、仏 (宇宙を支配する法) との合体であるという。内観の目標もまたそこにあるのではなかろうか。

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© 2001 日本内観学会
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