抄録
本稿では評判情報関連タスクにおいて必要不可欠と考えられる,評判情報コーパスを人手により効率良く作成する手法について検討し,作成されたコーパスについて基礎的な分析を行う.まず,注釈付けに用いる評判情報モデルとして,項目―属性―属性値―評価の4つ組からなる2層構造モデルを提案する.次に,複数注釈者の人手によるコーパス作成について検討する.その際に,注釈者間の注釈揺れが問題となる.予備実験の結果,注釈者が他の注釈者と相談をせずに独自に注釈付けの判断を行った場合には注釈付けの一致率が十分でないことがわかった.そこで,複数の注釈者間で判断に関する情報を共有するための方法として,注釈事例参照の利用を提案し,注釈事例参照を組み込んだ注釈付け支援ツールの試作を行った.これにより,注釈付けの判断に関する情報を複数の注釈者間で緩やかに共有することができる.評価実験によれば,注釈事例の参照機能が注釈揺れ削減に効果があることがわかった.さらに,上記の手法を用いた評判情報コーパス作成について報告する.また,注釈事例参照の有効性を確認した後,1万文のレビュー文書に対して10名の注釈者が注釈付けを行い,評判情報コーパスを作成した.そして,作成したコーパスについて,評判情報の各構成要素の統計的調査を行った結果,提案した2層構造モデルを用いて評判情報を捉えることが有効であることがわかった.