抄録
本論文では,地震や津波などの災害時に個人からソーシャルメディア上に発信される大量の書き込みから,救援者や被災者が欲している情報を自動的に取得する情報分析システムについて報告する.このシステムでは,質問応答技術により,災害時の被災地の状況や救援状況を俯瞰的に把握し,被災地からの想定外も含めた情報を取得することを目的としている.システムで利用している質問応答処理では構文パターンの含意に基づき質問文を拡張し,ソーシャルメディアへの書き込みに対して地名・場所名を補完することにより,幅広い質問に対応する.さらに,本システムを拡張することにより,被災地からの重要な情報提供が必ずしも救援者へ届かない問題に対応できることについて述べる.NPO や自治体などの救援者が状況把握のための質問を予め登録しておけば,救援を望む被災者が Twitter や BBS 等へ書き込んだ時点で,情報を求める側と提供する側の双方に自動的に通知できる.これにより救援者と被災者の双方向のコミュニケーションが担保され,救援活動がより効率的になると期待される.本システムの質問応答性能を我々が用意した 300 問のテストセットのうち回答が対象データに含まれる 192 問を用いて評価したところ 1 質問あたり平均 605.8 個の回答が得られ,再現率は 0.519,適合率は 0.608 であった.