自然言語処理
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論文
特許請求項に特有の文構造に基づく英中日特許請求項翻訳
富士 秀藤田 篤内山 将夫隅田 英一郎松本 裕治
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2016 年 23 巻 5 号 p. 407-435

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抄録

近年の統計的機械翻訳の進展によって特許文翻訳の精度は大きく向上したが,特許文中で特に重要性の高い特許請求項文に対する翻訳精度は依然として低い.特許請求項文は,(1) 極めて長い1文から構成される,(2) 特殊な文構造を持っている,という2つの特徴を持つサブ言語であるとみなせる.そしてこれらが翻訳精度の低さの原因となっている.本論文では,サブ言語に特有の特徴を処理する枠組みの導入によって,特許請求項の翻訳精度を向上させる手法について述べる.提案手法では,同期文脈自由文法を用いて原言語文が持つサブ言語に特有の文構造を目的言語側の文構造に変換することにより,適切な文構造を持った訳文を生成する.さらに本手法では,文全体ではなく,文を構成する構造部品を翻訳の処理単位とすることにより長文の問題に対処する.英日・日英・中日・日中の4翻訳方向で評価実験を行ったところ,全翻訳方向においてRIBES値が25ポイント以上向上し,本手法によって訳文品質が大幅に改善したことがわかった.英日・日英翻訳ではさらにBLEU値が5ポイント程度,中日・日中では1.5ポイント程度向上した.

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© 2016 一般社団法人 言語処理学会
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