2023 年 30 巻 2 号 p. 557-585
本研究では,文書中の用語間の関係を抽出する文書単位関係抽出において,既存の抽出手法に対して関係間の相互作用を考慮するために,用語を節点,抽出済みの関係候補を辺とする関係グラフを構築し,その関係グラフの辺を編集する逐次的な辺編集モデルを提案する.近年,文書単位関係抽出の研究では,深層学習モデルが利用されている.しかしながら,複数のモデルを組み合わせる方法は明確ではなく,研究ごとに実装方法も異なるため,付加的に新たな観点を導入するのは難しい.そこで,異なる観点として関係間の相互作用を考慮できるように,既存手法で抽出済みの関係候補を編集するタスクを提案する.材料合成手順コーパスにおいて,関係がついていない状態から編集するとF値79.4%の性能の逐次的な辺編集モデルで,ルールベース抽出器の出力を編集すると,性能は80.5%から86.6%に向上した.一方で,時間関係抽出の標準的なベンチマークである MATRES コーパスで最先端の深層学習モデルの抽出結果を編集して評価した場合では性能は向上しなかった.これらの差を解析したところ,編集するモデル単体で抽出可能な関係と編集前の関係が異なることが性能の向上に寄与する大きな要因であることを明らかにした.