2024 年 31 巻 2 号 p. 433-455
ニューラル言語モデルの成功を踏まえ,言語モデルの言語獲得について関心が高まっている.既存研究では,主に人間と言語モデルの第一言語獲得に焦点が当てられていたが,本研究では言語モデルの第二言語獲得にスコープを当てた調査を行う.具体的には,人間の第二言語獲得と同様のシナリオでバイリンガル言語モデルを学習し,その言語間転移について言語学的観点から分析する.実験の結果から,第一言語での事前学習は第二言語の言語的汎化を促進し,第一言語となる言語,第二言語学習時の対訳テキストの有無などといった言語間転移の設定が汎化の促進に異なる影響を与えることが示された.これらの知見により,言語モデルの言語間転移について,人間の第二言語獲得との類似点や相違点が多角的に明らかになった.