2024 年 31 巻 2 号 p. 479-503
機械による手順書理解は,文章中の手順に関する推論やこれらを元にした作業の自動化に必須である.先行研究では調理分野に焦点を当て,調理レシピの理解の表現としてレシピフローグラフ (recipe flow graph; r-FG) を提案し,そのアノテーションを作成した.r-FG は手順に関わる表現をノードとし,それらの関係をエッジとする有向非巡回グラフとして定義される.先行研究では,r-FG の自動予測のフレームワークとして,ノード予測とエッジ予測の 2 段階で行うものが提案されている.一方で,r-FG は調理分野に依存した表現となっており,調理以外の分野には適用されてこなかった.本論文では,一般的な手順書の理解の表現として wikiHow フローグラフ (wikiHow flow graph; w-FG) を提案する.w-FG は r-FG と互換性があり,既存の r-FG のアノテーションは w-FG に自動変換可能である.w-FG を用いて一般的な分野の手順書のフローグラフ予測精度を調査するために,wikiHow の記事を基に新たなコーパスである w-FG コーパスを構築する.実験では,調理分野から対象分野への分野適応を行うことで,ノード予測を 75.0% 以上,エッジ予測を 61.8% 以上のF値で行えることを示す.