2024 年 31 巻 3 号 p. 1015-1048
雑談では,感想を述べる発話が対話の盛り上がりに寄与することが知られている.しかし,話題や相手の発話に対して自然かつ共感を得られるような感想の生成は,話題や相手発話の理解に加え,それらから妥当な感想を推論するための常識的知識などの活用が求められるため,挑戦的な課題と言える.我々は,対話の話題に対する実際の人々の感想を外部情報として用いることで,対話文脈に対して適切な感想を生成できる対話システムの実現を目指す.本論文では,適切な感想の選択や,その感想を使った発話の生成をシステムに学習させることが可能な「感想付きニュース雑談コーパス」を構築した.本コーパスには,「話題であるニュース記事」,「ニュース記事に対する人の感想」,「対話」の三つ組みが 1,005 件収録されている.各対話は Wizard of Oz 法で収集され,システム役の話者は SNS に書かれた人の感想を発話に取り入れながら対話している.本コーパスを用いて,人々の感想を外部情報として発話を生成するシステムを学習した結果,従来法に比べて文脈に対して自然な発話ができ,かつ感想を含む発話を多く生成できていることが分かった.加えて,これらのシステムにより生成された発話は,雑談を盛り上げるような発話となっていることが明らかとなった.