2025 年 32 巻 1 号 p. 36-54
どのような単語がメタファーとして使われやすいかについて,言語学においていくつかの仮説が存在する.しかし,大規模なコーパスに含まれる,日常的かつ多様なテキスト表現に対してこれらの仮説を検証した研究は少ない.本研究では Web データを収集した大規模なコーパスである Common Crawl から抽出した文に自動メタファー判別器を適用することによって,メタファーに関する既存の仮説について大規模コーパスに基づく検証と分析を行う.具体的には,動詞メタファーの目的語の具象度,心像度,親密度に関する 3 つの仮説と,メタファーが含まれる文における感情および主観性に関する 2 つの仮説の合計五つの仮説を検証する.検証を通じて,これら 5 つの仮説がすべて成立し,目的語の具象度,心像度,親密度が低い動詞のほうが,メタファーとなりやすいことや,感情,主観性を持つ文の方がメタファーが使われやすいことを示す.