2025 年 32 巻 3 号 p. 800-828
テレビ番組のコンテンツ中のどのシーンへの反響が大きいかを知ることは,番組制作の分析,改善において重要である.特にオンエア中のテレビ番組を視聴しながら発信されるコメント(リアルタイムコメント)は映像を視聴した直後に発信されるフィードバックであり,分析対象として適している.従来研究では,テキストの内容か,もしくは,発信時刻のどちらか一方に重きを置くものが主流であり,長文のコメントなど投稿までに時間を要するものをシーンに適切に対応づけることは困難であった.そこで,この研究では,リアルタイムコメントに対して,そのコメントが言及しているシーンへ対応付けるための新たな手法を提案する.リアルタイムコメントの発信時刻と,それによって言及される番組シーンの放送時間との差は,かなりのばらつきがあり一様ではない.この時間差を扱うことが重要であるという見込みのもと,時間差を連続値として予測する回帰型のサブタスクを設定し,そのモデル化を行った.そして,このサブタスクを活用して,リアルタイムコメントのシーン別クラスタリングの大幅な精度改善を実現できることを示した.提案法は,テキストと発信時刻の両方を活用できる手法であり,サブタスクのためのモデルには,対照学習による単語埋込み層と全結合型の回帰層を統合したニューラルネットワークを採用することが有効であった.本研究の成果によって,SNS 発信を用いた番組シーンの評価をより深く番組の内容を理解しているユーザーのコメントによって行うことができるため,これまでよりも多様な映像表現への改善に活用できる可能性がある.