自然言語処理
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日本語レシピ文における時間的関係構造の自動生成
林 絵梨吉岡 卓東条 敏
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2003 年 10 巻 2 号 p. 3-17

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抄録

本稿の目的は日本語の料理レシピ文における各事象の時間構造を特定し, 隣接する事象間の時間関係を明確化することである. レシピ文は時間に沿った作業のシーケンスを述べたものであり, 事象間の時間関係を示す典型でありながら, 常識を排除して機械的に文章を読むと時間関係の復元が困難である問題があげられる. 本研究の試みはアスペクト, すなわち各事象の時間的側面に着目し, そこから文章全体の時間関係を再構築することである. 本稿ではイベント構造の概念を用いたアスペクト理論を用いることにより, アスペクトクラスを達成相, 完成相, 完了相, 進行相の4つの型に分類する. さらに事象の隣接関係を明確化するために完成相, 完了相の細分化を試みる. この細分化により進行や完了の関係, 並行動作関係, 終了時や開始時の前後動作関係を解析することが可能となった. またアスペクトを補助する情報として副詞句, 省略動作, 並行関係に着目し, 事象の時間的な隣接関係を簡潔に表現することによって, 文章全体の時間的な意味を限定した. 以上の結果に基づき, 料理レシピ文における時間的関係構造の自動生成システムを設計した.

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