自然言語処理
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初期質問文から蓄積された質問応答への効果的マッチング法
松井 くにお田中 穂積
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2003 年 10 巻 5 号 p. 121-138

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抄録

カスタマサービスとして, ユーザから製品の使用方法等についての質問を受けるコールセンターの需要が増している. ユーザからの質問に的確に応答するためには, 次々に開発される新製品の知識が必要となる. 応対するオペレータは, 過酷な業務のため定着率が低く, 企業にとってもレベルの高い人材を継続して維持することは, 人件費や教育などのコストがかかり, 問題となっている.
本研究は, ユーザが自ら問題解決できるような, 対話的ナビゲーションシステムを実現する基礎技術を開発することにより, コールセンターのオペレータ業務の負荷を軽減することを目的とする. Web上での質問応答システムにおいてユーザが初期に入力する自然言語による状況説明や質問文を分析したところ, 20文字以下の質問文が7割を占めていた. 一方, コールセンターでは, オペレータが, 過去のユーザとのやり取りの結果を, 質問と応答の要約文として蓄積している. そこで, 本研究では, ユーザが初期に入力する20文字前後の比較的短い質問文を対象とし, その質問文から, コールセンターで蓄積した過去の質問の要約文を引き出し, それに予め付与された応答をそのまま回答する手法を採用する. しかし, ユーザの与える20文字以下の短い質問文と蓄積された要約文との単純なマッチングでは, 多数の要約文が引き出されることが多いため, システムからユーザに新たなキータームの入力を促してユーザの意図する適切な要約文に速やかに到達できるような対話的ナビゲーション技術の開発が最も重要な研究課題となっている. 対話的ナビゲーションを実現するために, ユーザが初期に入力した質問文中のどのようなタームが最適な要約文の検索に重要であるかを判定する方式として, 入力した質問と要約文とのマッチングが成功したものから一定の基準によってタームを変更する方式 (サクセスファクタ分析方式と呼ぶ) を開発した. この分析の結果から, 主辞を修飾するタームをユーザの質問文に対して対話的に補うことがマッチングの精度に大きく影響し, 極めて有効なことを実験的に明らかにした.

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