抄録
機械翻訳システムによる翻訳を人間による翻訳に近づけるために取り組むべき課題を明らかにしようという試みの一環として, 本稿では, ニュース記事から無作為抽出した英文を英日機械翻訳システムで翻訳した結果と, これらの英文を人間が翻訳した結果を照らし合わせ, 両者の間で使用されている動詞の馴染み度の分布に違いがあるかどうかを計量的に分析した. 動詞の馴染み度を測る尺度としては, NTTの単語親密度データベースを利用した. 分析の結果, 機械翻訳システムによる翻訳と人間による翻訳の間で単語親密度の分布に統計的有意差は認められず, 使用されている動詞の馴染み度に関しては両者の間で違いがないということが示唆された. 従って, 格要素などとの共起関係を考えず動詞だけに着目した場合, 調査対象とした機械翻訳システムでは動詞の翻訳品質は一定のレベルに達していると判断できる.