自然言語処理
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シナリオを対象とした構文解析規則記述法
黒澤 義明市村 匠相沢 輝昭
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2005 年 12 巻 2 号 p. 25-62

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抄録

本研究は, シナリオを対象とし, 人手での管理を目標とした構文解析規則の記述法を提案する.シナリオには, 話し言葉としての台詞が含まれ, 省略・倒置など, 書き言葉にはない特徴がある.このため, 正しく解析を行うには, これらの特徴に対応した規則が必要である.そこで本研究は, 正規表現を用いた, 自由度の高い記述法に従い, 構文解析を行うシステムを構築する.正規表現の採用は, 「 (助動詞1終助詞) 」等の表現を許すため, 省略の有無に関わらず, 同一の規則の適用が保証される.また同一の規則により, 多くの非終端記号列と照合が行えるため, 規則数が削減可能となり, 汎用性を高めることが可能となる.この考えに基づいた構文解析器を実装し, シナリオ21作品 (約40000文) を参考に, 約3000個の規則を人手で作成し, 実験を行った.この規則は, 様々な言い回しに対処できるよう, 詳細に記載された.実験の結果, オープンテストにおいても高い正解率を示し, 本手法による解析器は, 自由度の高い, 有用な解析器であることが明らかになった.また, 上述の規則により, 正規表現を使用しない場合と比べ, およそ10倍の非終端記号列を指定することができ, 記述力が高く, 汎用的であることが明らかとなった.

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