自然言語処理
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学習者コーパスからの表現バリエーションの抽出と言い換えストラテジー指導への利用
和泉 絵美内元 清貴井佐原 均
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2005 年 12 巻 4 号 p. 193-210

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抄録

言語によるコミュニケーションにおいて, 伝えたいメッセージに適した語彙やフレーズを知っているか, またそれを導出できるかということは重要である.しかし, 非母語話者は, あらゆる状況に十分対応できるだけの語彙・表現を知らない, あるいは一度学習しても, いつでも適切に導出できるほど定着していないことが多い.外国語での発話において, 言葉に詰まった場合他の表現で言い換えることができれば, その結果まわりくどい表現になったとしても, コミュニケーションを続行させることは可能である.語彙・表現を個々に教示するだけではなく, その語彙に関連する他の語彙や表現のバリエーションも共に教示すれば, 学習者が発話続行のための言い換えというコミュニケーションストラテジーを実行する手助けとなるのではないだろうか.本研究では, 日本人英語学習者発話コーパス・The NICT JLE(Japanese Learner English)Corpusの中に見られる学習者によるさまざまな表現を抽出する実験を行い, 言い換えストラテジー指導への応用および学習者による学習者コーパスの直接利用の可能性について考察を行った.実験では, 少数の英語母語話者発話データから選び出したキーワードリストを元に, 大量の学習者データから同一の項目について言及していると思われる文の自動抽出を試み, 表現リストの作成を行った.複雑な事柄に関する発話に対しては, 約5割前後の再現率・適合率を, また比較的平易な事柄に関する発話に対しては, 約7割の再現率および約6割の適合率を得た.

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