抄録
映画や書籍などの作品検索への応用を目的として, 作品レビューテキスト中の感情表現の構成要素を分析した.まずWeb上の作品レビュー82件1, 528文中の653組の主観表現を人手で分析し, 「態度」「主体」「対象」「理由」という4つの構成要素と, その各々の下位要素を定義した.653組の主観表現中, 「態度」が感情を表している感情は257組あった.次に感情表現の各構成要素の内容や働きを分析し, 構成要素間の結びつきや, 「主体」や「対象」が省略されるパタン, 省略されない特殊なパタンなどを明らかにした.「理由」は, 感情が生起した根拠や理由を述べている部分をさし, 257組中66件 (25.7%) に出現した.本稿では, 利用者の作品選択に, より具体的な情報を提供しうる可能性がある要素として「理由」に着目し, さらに分析を進めることとした.次に, 異なる文書タイプにおける「理由」の出現のしかたや分析の手がかりを調べるために, Web上の作品レビュー, オンラインショッピング内のブックレビュー, 新聞記事からサンプルを選び, 「理由」に着目した追加分析を行った.最後に, 作品検索システム利用者の鑑賞作品選択における「理由」のあるレビューの重要性を確認するため, 3つの映画それぞれ10件ずつ計30件の作品レビューを用いて, 8名ずつ2グループの計16名に対し被験者実, 験とフォーカスグループインタビューを行った.この結果, 作品レビューの読み手が第三者の書いたテキストを参考にする際, 「理由」の有無がその内容を理解し, 鑑賞する作品を選択するのに参考になるかどうかの判断に大きく寄与していることがわかった.作品検索では, 「理由」の有無や内容をレビューの重要性の順位付け等に応用することなどが考えられる.