自然言語処理
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ゲーム理論に基づく参照結束性のモデル化と日本語・英語の大規模コーパスを用いた統計的検証
白松 俊駒谷 和範橋田 浩一尾形 哲也奥乃 博
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2007 年 14 巻 5 号 p. 199-239

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抄録

参照結束性 (referential coherence) は, 主題の連続性や代名詞化によってもたらされる, 文章の滑らかさを表す.では, なぜ参照結束性が高い表現/解釈が選択されるのだろうか.参照結束性の標準的理論であるセンタリング理論は, 従来, この行動選択のメカニズムをモデル化していなかった.本研究の目的は以下の2つである.(1) この行動選択原理をゲーム理論でモデル化した仮説 (Hasida1996;白松他2005) を, 複数言語のコーパスで検証すること.(2) ゲーム理論の期待効用という値が選択基準になり得るか確かめ, 様々な言語の談話処理で利用可能な表現/解釈の選択機構をモデル化すること.
そのために本稿では, 意味ゲームに基づくセンタリングモデル (MGCM;Meaning-Game-based Centering Model) を多言語化した.具体的には, 言語依存パラメタの定義を統計的にし, コーパスからのパラメタ獲得を可能にした.本改良により多言語への適用が可能になったので, 日本語と英語のコーパスを用いてモデルを検証した.その結果, 参照結束性の高い繋がりを持つ発話では, 期待効用が高い表現/解釈が選択されているという統計的な証拠を得た.これにより, MGCMの言語をまたぐ一般性, すなわち, 「参照結束性はゲーム理論の期待効用原理によって引き起こされている」という仮説の言語一般性が示された.

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