抄録
機械翻訳システムを使用して現実の文書を翻訳する場合, 通常, 翻訳対象文書に合った利用者辞書が必要となる. 特に, 高品質翻訳を狙った機械翻訳システムでは, 各単語に対して, 約2,000種以上の分解精度を持つ単語意味属性の付与が必要であると言われており, 一般の利用者が, このような精密な情報を付与するのは困難であった. そこで本論文では, 利用者が登録したい日本語名詞 (複合名詞を含む) と英語訳語を与えるだけで, システムがシステム辞書の知識を応用して, 名詞種別を自動的に判定し, それに応じた単語の意味属性を付与する方法を提案する. 本方式を, 新聞記事102文とソフトウエア設計書105文の翻訳に必要な利用者辞書作成に適用した結果, 自動推定方式では, 専門家の付与した意味属性よりも多くの属性が付与されるが, 40~80%の再現率が得られることが分かった. また, 人手で作成した利用者辞書を使用する場合と同等の訳文品質が得られることが分かった. 以上の結果, 利用者辞書作成への単語の登録において, 最も熟練度の要求される単語意味属性付与作業を自動化できる見通しとなった.