抄録
英字新聞記事の見出しは通常の文の表現形式とは異なる特有の形式をしているため, 従来の英日機械翻訳システムによる見出しの翻訳の品質はあまり高くない. この問題に対して本研究では, 見出しを通常の表現形式に書き換える自動前編集系を既存のシステムに追加することによる解決を目指している. 見出しを通常の表現形式に書き換えれば, より品質の高い翻訳が, システムの既存部分にほとんど変更を加えることなく得られる. 例えば“Sales up sharply in June”という見出しは通常のシステムには受理されない可能性が高いが, “Sales were up sharply in June”のようにbe動詞“were”を補えば従来のシステムでも適切な翻訳が得られるようになる. 本稿では, 見出し特有表現の典型例の一つであるbe動詞の省略現象を対象とし, be動詞が省略されている見出しにbe動詞を正しく補うための書き換え規則を, 形態素解析と粗い構文解析によって得られる情報に基づいて記述する. この方法を, 我々が開発している英日翻訳支援システムPower E/Jに組み込み, 未知データの見出し312件を対象として実験を行なったところ, 再現率81. 2%, 適合率92. 0%の精度が得られた.