抄録
以上述べたように動脈硬化の食事をアルギニンを中心に考えると, 従来の常識の修正が必要となる.
一般に戦後の栄養学が「不足に対処する栄養学」であり, それが70年代には「過剰の害を防ぐ栄養学」を主体に展開し, そして今や「個々の臓器組織の保持と修復の栄養学」を目指して進んでいるように見える. この目的を達成するためには, 個々の臓器組織の機能と栄養素との関連が十分明らかでなければならない. また, 例えばプロリンのように骨線維構成分として必要なアミノ酸が記憶 (痴呆) には最も悪いアミノ酸であることに代表されるように, 個々の臓器組織の保持は異なった栄養素の質と量に支えられており, 殊に老年期における臓器組織の障害や機能低下には, このことを念頭に置かねばならぬ. 本編で記述した「リジン」以外にもメチオニンに代表されるように過剰の毒性や不利益について, さらに深く研究すべきことが, アミノ酸やその他の栄養素についても注意されはじめている.