抄録
明らかな心疾患をもたない糖尿病患者49例, 年齢と性を一致させた健常者33例について99mTC-HSAによる仰臥位自転車エルゴメーター法での運動負荷心プールシンチグラフィーを行い, 以下の成績を得た.
1) EFは運動負荷後健常者コントロール群で有意に増加したが, 糖尿病患者群では増加傾向は認めるものの, 有意の増加を認めなかった. これを年齢別にみると, 30歳代の糖尿病患者群では運動負荷後EFの低下傾向が認められた.
2) PERは両群とも負荷後有意に低下したが, 年齢別に分けてみると, 30歳代の糖尿病患者群では運動負荷後PERの有意の低下を認めなかった.
3) TESは両群とも負荷後有意に短縮したが, 年齢別に分けてみると, 30歳代の糖尿病患者群では運動負荷後TESの有意の短縮を認めなかった.
4) PFRは両群とも負荷後有意に増加したが, その増加率はコントロール群に比べ, 糖尿病群の方が有意に低かった. 年齢別にみると, 30歳代の糖尿病患者群では運動負荷後PFRの低下傾向が出現した.
5) 糖尿病患者群のうち, 4例に中隔壁運動の低下が認められた.
6) 糖尿病患者群では, 負荷前後のEFの変化率と糖尿病のコントロール状態との間に有意の相関は認められなかった.
以上より, 明らかな心疾患をもたない糖尿病患者でも運動負荷による心プールシンチグラフィーにより心機能を解析すると, 収縮期指標, 拡張期指標ともに異常が出現し, preclinical stageでの糖尿病による潜在的心機能障害, 心予備能の低下の存在が示唆された. また, 糖尿病に見られるような潜在的な心機能障害の検出には, 99mTC-HSAによる運動負荷心プールシンチグラフィーが有用であると考えられた.