日本口腔保健学雑誌
Online ISSN : 2434-7116
Print ISSN : 2434-7108
調査研究
歯科診療所に勤務する歯科衛生士の口腔がんに関する意識調査
新井 早苗合場 千佳子
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2020 年 10 巻 1 号 p. 73-80

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抄録

 口腔がんは希少がんとして位置づけられるが,罹患率は増加傾向を示している.歯科衛生士は患者の口腔内を観察する専門職として,口腔がんに関する知識を習得することが重要であると考える.本研究は,歯科診療所に勤務する歯科衛生士を対象に,メインテナンス時の口腔内の観察部位や口腔がんの観察に対する意識を調査することを目的とした.関東近郊の歯科診療所に勤務する就業年数1年目から10年以上の歯科衛生士191名を対象に,無記名による自己記入式質問紙調査票を郵送し調査した.

 調査結果から,口腔がんに関する授業や講習会を受講している者は66.0%であるが,就業年数が経過していくにつれ受講している者は少なかった.口腔内を観察する部位では,歯肉が96.9%,口腔底が25.7%であった.口腔内写真を撮影している者は,75.0%であった.口腔がんを早期発見するためには,スタッフ間の情報共有が必要であり,口腔内写真は有効なツールと考える.口腔がんに関する部位別の意識調査においては,「意識している」として捉えている者の割合が8割以上と高い傾向を示した.しかし,口腔底については「たまに意識する」の割合が最も多く,定期的な観察意識は低い値となった.

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© 2020 日本歯科大学東京短期大学
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