西田哲学会年報
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エルンスト・カッシーラー(1874‒1945)と 西田幾多郎(1870‒1945)の対話に向けて Steve
Steve G. Lofts
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2020 年 16 巻 p. 98-124

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抄録

 本論文は、エルンスト・カッシーラーと西田幾多郎の二つの哲学が共有し両者 の対話がそこにおいて生じるような場所を確立するために、これら二つの哲学を 比較する哲学的試みである。本稿で論じられるのは、カッシーラーと西田の企図 に共通する哲学的な意図が、西洋の形而上学的伝統の凝り固まった二元論の超克 にあること、またこのことは超越論哲学と生の哲学という、相反する二つの哲学 的見地を逆説的に統合することで成し遂げられるということである。本論はまず 彼らの哲学的な企てが持つこの逆説的な性格を、それぞれのベルクソン批判を検 討することによって明らかにする。そのうえで、カッシーラーと西田が、形而上 学的な二元論を生じさせてきた根本要因を捜して古代ギリシャ哲学全般に、また 特にアリストテレスの実体概念にまで立ち戻ることを見る。さらに両者それぞれ のヘーゲル哲学への関わり方を検討することで、両者の哲学的企図を構成する本 質的な諸要素の比較を行う。最後に、現実性と可能性(エネルゲイアとポテンチ ア)の存在論的カテゴリーの逆転という観点から、カッシーラーの「全き可能性」 の概念と西田の「絶対無」の概念を比較する。

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© 2020 西田哲学会
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