Journal of Information Processing and Management
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From human readability to machine readability : A proposal from a creator and publisher of an XML journal
Hidehiko NAKANISHI
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2014 Volume 57 Issue 3 Pages 149-156

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著者抄録

機械可読性とはコンピューターによる文書構造の認識しやすさである。機械可読性に配慮した文書はより検索されやすく,利用されやすくなる。逆に,機械可読性を考慮しない文書は流通しにくい。今まで,文書は人間可読性を高めることに重点が置かれてきたが,文書流通がインターネットを中心とするようになり,XMLを利用した機械可読性を高めた文書の重要性が増してきている。しかし機械可読性と人間可読性は往々にして対立する。本稿では,これらの対立の事例を検討し,オンラインジャーナルでは当面機械可読性優位の組版が行われるべきであることを示す。

1. 機械可読性と人間可読性

機械可読性とは字義通りとれば,機械(コンピューター)での文書の読み取りやすさということになる。この場合,わざわざ可読性に「機械」を付与するのは,機械の読み取りやすい文書と人間の読み取りやすい文書は形式において異なるからである。もちろん,これはスキャンしたときのOCRとしての読み取りやすさということではない。機械がデータとして取り扱う際の容易さという意味合いである。

1.1 機械可読性と人間可読性の差違

この機械可読性と人間可読性の差違は,人間の文書認識方式と,コンピューターの文書認識方式が根本的に異なるところから生じる。しかし,最近にいたるまで,このことが意識されることはなかった。文書とは人間が読み取るために存在するのであり,人間以外が文書を読み取るということ自体が考慮されてこなかった。手書きの時代から活版の時代を経て,DTP(Desktop Publishing)にいたる現在まで,印刷工程でいう組版とは人間に読みやすい文書を作るための作業だったといえる。タイトルの字を大きくしたり,サブタイトルの前で行間をあけたり,ノンブル(ページ番号)や柱(ページ上部欄外などのタイトルや著書名などの表示)を付けたりという作業である。現在この論文を紙版もしくはPDFファイルで読んでいただいている場合は,まさに人間可読性が優先された誌面で読まれていることになる(1)。

図1 人間の可読性の高い文書例

これに対し,機械であるコンピューターの読みやすい文書とは,構造が明確な文書であることに尽きる。ここでいう構造とは,タイトル,著者名,節や段落が明確に定義・分類されていることである。文書内容が明確に定義・分類されていれば,当然その文書を受け取るコンピューターは明確に内容を分類・把握し認識できる注1)

たとえば,人間可読性の高い文書では,タイトルとは文書の冒頭付近にあって,字が大きい表現がなされているものと一般に認識されているが,コンピューターにとってこの基準をもってタイトルであるとは認識しにくい。文書の冒頭であること,字が大きいということをまず認識して,そこからタイトルであると判断を下す。しかし,文書の冒頭であって,字が大きくてもタイトルであるとは限らない。広告であるかもしれないからだ。

タイトルぐらいならまだしも,サブタイトルとキャプションの区別,本文と参考文献の区別を字面だけから判断することはコンピューターにとって非常に難しい。また,たとえ読み取れたとしても誤読が頻発する可能性がある。つまり,こうした人間可読性の高い文書の機械可読性は高くない。

機械可読性の高い,構造が明確に定義・分類されている文書というのは,ここからここまでがタイトルである,ここからここまでが本文である,キャプションである,参考文献である,人名である,物質名であると明確な宣言を行って記述する。ここでタイトルを視覚的に大きくしたりする必要はない。したがって,2のような形式がコンピューターにとって読みやすいことになる。

図2 コンピューターの可読性の高い文書例

ここで模式的に示したが,この<title></title>というような記述が構造を明らかにする。これによって,<title>と</title>の間にある文字列はタイトルであることが明確にコンピューターに認識される。こうした< >で囲まれた文字列は,文書の構造を明らかにするものでタグと呼ばれ,広く使われている。

こうしたタグ付けにはXML(EXTensible Markup Language)のような汎用マークアップ言語が使われる。XMLは経理データや製品データのRDB(Relational Database)のような完全な構造化を伴った形式ではないが,柔軟な利用法を可能としている。再利用性と構造化の絶妙なバランスをとった形態といえる1)

こうした機械可読性の高い文書を人間が読むと,<title>というような文字が目に入るたびに,そのtitleという字自体が意味として知覚されるので,読みづらく感じる。それよりもタイトルに相当する字を大きくして,行間や段間をあける方が読みやすい。

1.2 組版の人間可読性優先

書籍・雑誌の編集作業においては,圧倒的に人間可読性の文脈で組版が行われてきた。本文やタイトルにどの書体を選び,どの大きさで表示し,版面の大きさはいかにするかというようなことに編集現場は細心の注意を払ってきた。また図や写真のレイアウトについては,参照する本文の近い場所に置き,キャプションを適切に配置するといったこともなされてきた。いわば,文書を人間にとっていかに扱いやすく,読みやすくするかということを中心に組版は成立していた。

学術雑誌の世界でも編集現場は人間の可読性に対して非常に敏感であって,書体や組版の1行の置き方までも問題にするなど繊細な組版を要求してきた。たとえば文書が1ページの中におさまりきらず,1行だけ次のページに送ることになった場合,前のページの行数を減らしてでも1ページにおさめるようなことが行われる。

しかし,これらの繊細な編集は人間の可読性にとっては有効であっても,機械には必ずしも有効ではない。これらの編集部の組版に対する審美性の追究が,論理的であり,かつ一定の規則の下になされるのであれば,構造化による機械可読性と人間の可読性は文書において両立しうる。しかし図の配置1つとってみても,そこに規則性を見いだすことは非常に困難である。

機械可読性の視点からすれば,人間の可読性を高めるための表現上の工夫は,むしろ文書の構造を誤って解釈させる危険性を増大すらさせてしまう。たとえば,表現上の工夫として強調のために文字を大きくしているような場合,機械にとっては大きい字であることがタイトルを表すのか,強調なのか,判別することが難しい。

2. 学術雑誌における機械可読性の重要性

近年,文書の機械可読性の重要性が増してきている。情報流通が紙のみで行われていた時代にあっては,文書は人間の可読性のみが追究されていれば問題なかった。ところが,近年,文書流通はインターネットなどのオンラインネットワークを通じて行われることが普通になってきており,機械可読性の高い文書であることが文書流通を促進させるための決定的な要因になりつつある。

2.1 検索性の優越

膨大な学術文書が流通する今日,文書検索はGoogle Scholarのような検索エンジンを使って行われることが主流である2)。この場合,検索エンジンで検索されなければ,そもそも学術文書が発見されることはなく,したがって業績も知られることはない。優れた業績であっても,知られなければそれは存在しないに等しい。

商用Webサイトの世界ではSEO(SearchEngine Optimization)対策と呼ばれる行為が広く行われている。検索された時に自社のWebサイトが優先的に表示されるようにHTMLファイル内にさまざまな修飾を施す行為である。これには適切な検索結果が得られないというマイナス面も指摘されているが,インターネット上の検索が現在の社会にあってはいかに重要となっているかの証しでもある。

このように検索性を高める場合にも,文書の機械可読性がまず重要なのは言うまでもない3)。文書内に機械がキーワードと認識できる単語が羅列してあれば,それは当然検索用に使用されるであろう。反面,人間可読性に配慮してあるだけでは,そうしたキーワードは機械によって容易に収集されることはない。もちろん検索エンジン側で人間可読性の高い文書であっても,検索の拾い落としのないように配慮すべきという意見もあるかもしれないが,当面は実現可能な対応策として機械可読性を高めるべきであろう。

インターネット上にある文書は単に単語で検索されるだけでなく,Altmetricsでの評価4),レコメンド機能のように過去の検索結果などと併せて,コンピューターの検索エンジンが多くの文書の中から読者に最適なものを表示するという方向に向かっている5)。こうなると,機械可読性に壁があったのでは,論文は読者に到達することはない(3)。したがって,読まれず,引用されることもない。

図3 機械可読性の壁

2.2 再利用の可能性

検索問題だけにこだわるのなら,人間可読性の高い文書で,かつオンライン流通が可能なPDFファイルに書誌情報を付加するという選択があると考えられる。このPDFファイルに書誌データを付加するのが,近年のオンラインジャーナルの検索性を高めるための工夫であり,J-STAGEもVer. 2までは,その方法で提供されてきた。しかし紙の出力を前提としたPDFファイルでは画面上で読みにくい注2)という致命的欠陥があることに加え,再利用しにくいことが問題となる。一方,XMLのような構造化された文書形式で入力されていれば,文書を引用するときにいちいち入力するのではなく,コピー&ペーストだけで済ませられるということがあげられるが,それはさまつな利点でしかない。むしろ,XMLのような構造のはっきりした文書であれば,さまざまな文書を横断的に参照しながら新たな文書として再構成するということがコンピューターを通じて可能となることが大きい。複数の文書から,タイトルのみを集めて,索引として再構成したり,多様な方法で入力された統計データをXMLのタグをもとに1つにまとめるといった用途が考えられる。

もちろんこの場合,出典は出典情報として同時に提供されるから,再構成後の文書からさかのぼって原論文が発見されるということもあるだろう。

学術論文,ことに文系の論文は過去の文書を引用しながら新たな知見を加えて,新たな知(論文)が再生産されるという過程を経るが,そうした過程がかなりの程度まで自動化される可能性がある。

文書の再利用性はオープンアクセスにおいても重要視されるようになってきており,究極的なオープンアクセスの本質とは無料公開するだけではなく,論文の再利用性を高めることとされる6)

3. 機械可読性と人間可読性の両立

前章までに例証したように,機械可読性はオンライン情報流通時代にあってその重要性が増している。ただし,検索性や再利用性があるとしても,最終的に読むのは人間であることもまた事実である。いくら機械可読性が高いといっても,2のような文書を人間に読ませることはできない。

オンライン時代以降,組版現場はこの両立に頭を悩ませてきた注3)

3.1 人間可読性優位組版の終焉(しゅうえん)

オンラインジャーナルの作成初期は,紙版(紙の誌面を画面で見るためのPDF形式の提示を含む)とオンライン版を同内容で別に作成するのが通常であった。当時は,紙版つまり人間の読みやすい誌面を作ってから,これをオンラインでも利用できるようにSGML(XML以前に使われた形式)のタグ付けを行うという技法をとっていた注4)。しかし,これでは紙版とオンライン版の両方を作成するために二度手間であり,やがてオンライン版と紙版を同時に作成できるようなソフト注5)での組版が主流となったが,これでも紙版の表現にひきずられやすい。前述したように紙版での人間可読性の追究は機械可読性の面からみるとあまり意味がない。

機械可読性の高い構造化データにする際は,こうした人間可読性のための処理は残らず消去しなければならず,完全な二度手間である。たとえば次のような例(4)をあげる。

4は一見なにげない文書のようであるが,人間可読性を追究した結果,出力されたXMLは5のようなものになる。

図4 人間可読性優位文書例
図5 4のXMLの出力

これは,行の間で名詞を割らないという禁則処理を厳密に展開するために起こる例である。4の例では「アンモニア」という名詞の途中での改行を防ぐためにユニコードのノーブレークスペースを組版段階で挟み込んでいる。組版後はこうしたノーブレークスペースは表示されないため,見た目には非常にきれいな組版となる。つまり人間可読性は高い。反面,XML文書としては最悪である。名詞の途中に余計なコードが入ってしまっているため,あとの全文検索などでは,「アンモニア」がヒットしない可能性がある。

XML化に際してはこうしたコードは取り外す必要がある。一括置換で取り外せば手間がかからないと思うかもしれないが,一括置換は本来必要なところまで置換してしまい,思わぬ結果を招くことがある。結局,1つひとつ吟味する必要があり,校正の手間は膨大である。

人間可読性組版(通常の雑誌組版製作)から機械可読性組版(XML)に変換して使用するという方法は事実上,破綻しているといっていい。

3.2 XMLからの自動組版

その後,紙版が廃止される傾向とも相まって,むしろ汎用の構造化データ(XML)をまず作成し,その後自動組版で紙版を作るようになってきている。

まずデータの構造化を完璧にXMLとして作り上げ,それを自動的に人間の読みやすいような表現形式に落としこんでいくのである。

この作り方であれば作成時点では人間側の可読性を追究することに煩わされず,論理的に整合性のある文書を作成することができる。その後コンピューターがXMLの構造を読んで,紙の印刷には紙にふさわしい表現形式に,画面には画面にふさわしい表現形式に自動的に変換して表示する注6)。たとえば<title>タグの付加された文字列が記載されていたとすれば,自動組版ソフトは,字を大きくゴシック体で表示するという処理を自動的に行うのである。同じことが,画面上のHTMLにも施され,画面に適した表現で表示されることになる。

現在の組版現場の関心の中心は,この機械可読性に特化したXMLから自動的に人間可読性の高い文書を作成するソフトウェアの開発である。

3.3 機械可読性と人間可読性の相克

それでも,人間可読性と機械可読性の衝突は避けられない。一例として6の例をあげる。

図6 XML不整合の例

理系の学術雑誌でよく目にする実験結果を提示する表であるが,これをXMLの構造化組版として表現しようとすると,現在のJATS注7)では困難である。主たる原因は有意差を表す行間にかかわるp =0.022,p < 0.001という表現にある。これはどの行にも属さないが,人間の可視性にとっては差を明確化するためには重要である。ただし文書の構造上,必要な表現ではなく,あくまでも人間の読みやすさに依存した組版である。コンピューターにとっては,この表現が行と行の間にある必要はないし表現もできない。

これらの不整合と,人間可読性を両立するためにXMLスキーマ言語の1つであるDTD(Document Type Definition)を拡充することが考えられる。NLM DTDが開発されて以来,XMLの表現力の低さに困惑した印刷会社からは,幾度となく人間可読性のための複雑な組版表現を可能にするDTDの開発が主張されてきた。具体的にはNLM DTDやJATS(Journal Article Tag Suite)のElementsを増やすという提案がなされてきた注8)

しかし,人間可読性を高める表現のために無限にDTDのElementsを増やすことは構造化にとっては何の意味もなく,むしろ構造化と関係ないレベルで文書構造を複雑化し,構造化の本質に反することとなる。

これから何千年にもわたってどのような利用形態が生じるかわからないときに,構造の破綻した汎用性のないXMLファイルをアーカイブすることにほとんど意味はない。

4. 機械可読性の優位原則

今後の出版編集は,人間の側の可読性を高めるという従来どおりの役割をもつ一方で,機械可読性がさらに重要になってくると思われる。機械可読性の考慮されていないものは,SEO対策のされていないWebサイトと同じで,読者から発見してもらえる可能性が低くなる恐れがあるからだ。これは販促としての対策というレベルではなく,文書利用そのものにおいて機械可読性が考慮されていなければ,文書の利用価値が低下してしまうという切実な問題でもある7)

そして,人間の可読性と機械可読性が衝突する場合には,機械可読性が優先されるべきだろう。

もちろん機械可読性優位といっても,それは「程度問題」であって,現状,機械可読性を優越させてしまったがために極端に人間可読性が低下することはない。また,構造化された文書を人間可読性を高めた表現形式へ自動変換するようなソフトウェアも今後さらに発達すると考えられる。逆に人間可読性を優先した文書を構造化文書に変換することも可能となるだろう。

問題なのは,この機械可読性から人間可読性に変換する方が,人間可読性から機械可読性に変換するよりはるかに容易だということである8)。このことを考慮して,構造化され機械可読性を高めた文書の利用の高度化を考え合わせると,遠い将来は別としても,機械可読性が人間可読性より優先されるべきであると考える。

組版現場としても編集者が恣意的に決定し,かつ将来,人間の審美性が変化した場合,意味のなくなる人間可読性優位の組版は受け入れにくい。機械可読性優位組版は検索性がよく,将来的に利用される可能性も高い。また一括変換や自動化が可能であることなど,製作コスト的にも有利である。現時点では,組版現場に身を置く立場としては機械可読性優位組版を強く推奨したい。

本文の注
注1)  コンピューターの言語の把握分析能力を総体として表すときに,適切な言葉がないため,ここでは「認識」という言葉を使う。もちろん哲学用語でいう「認識」とは異なる。

注2)  たとえば,2段組みの雑誌では,画面を下にスクロールして,また次の段に移るときは上に画面を戻さなければならない。画面の幅によっては画面からあふれてしまった文を横にスクロールしながら見なければならない。

注3)  中西印刷の個別の経験であるが,たいていの印刷会社は同じ悩みを抱えていたと思われる。

注4)  組版したものをいったんテキストにして,一からタグ付けする。タグ付け間違いが生じやすく,費用的に嵩む。現在でも,PDFからテキストを抽出して,タグ付けすることは英文誌を中心に行われている。

注5)  中西印刷がOxford University Pressから紹介された技法もAdobe FrameMakerを使用したこの同時作製方式であり,当時(2000年前後)広く使われていたと考えられる。

注6)  AH FormatterなどのXMLからの自動組版ソフトを使用する。

注7)  JATS (Journal Article Tag Suite):学術雑誌に使われるXMLスキーマ。J-STAGEでも採用されており,事実上,学術雑誌製作のスタンダードである。

注8)  JATSの改訂にあたって,日本からの意見を集約するSPJ(Scholarly Publishing Japan)やXSPA(XML Scholarly Publishing Association,学術情報XML推進協議会)の会議では,印刷会社から,表現力向上のための提案がたびたびなされていた。

参考文献
 
© 2014 Japan Science and Technology Agency
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