2015 Volume 58 Issue 7 Pages 581-584
米国議会がオープンデータに関するデータ法(Digital Accountability and Transparency Act: DATA Act)を2014年5月に満場一致で可決した後,米国政府はデータ標準を検討してきた。行政管理予算局(Office of Management and Budget: OMB)と財務省(Treasury)は,データ標準の発表と,財政援助の受益機関や契約機関の負担を軽減させるためのパイロットプログラムを2015年5月に開始し,連邦機関に向けてポリシーガイダンスを発令した。そして8月31日には,57すべてのデータ標準が最終決定されたことを発表した。これらのデータ標準は,税金の使用状況に関する情報を国民に知らせる,検索可能なパブリックアクセスサイトであるUSAspending.gov上のデータの質と整合性を高めるための基盤を提供するものである。
これまで巨額にのぼる米国政府の契約や補助金は,一律に追跡することができなかった。David Mader連邦財務管理局長とDavid Lebryk財務省財政業務局長は,ブログの中で次のように述べている。「(それらの情報は)分断された各部門ばらばらのシステムに,さまざまなフォーマットで収容されてきた。私たちは,USAspending.gov上に発表される情報を標準化し,コンテキストをユーザーフレンドリーなフォーマットで提供することにより,税金がどのように,誰によって,何の目的で使われているのかについて有益で使用可能な情報を提供するための重要な第一歩を踏み出したところである」。
ニューヨーク市1,800の公立学校に向けて,電子書籍購入のプラットフォームを運営するために,Amazon社と契約を結ぶことにしていた市教育局(Board of Education)が,計画の延期を発表した。当初の計画では,契約は,3年間3,000万ドル,その後2年間3,450万ドルの更新オプションを入れると,総額では5年間6,450万ドルに達する。Amazon社が提供するのは,幅広く使用される教科書などの契約コンテンツと,各学校が選択してAmazon社から直接購入する書籍やテキストなどの非契約コンテンツで,どちらのコンテンツも低価格であることが期待されている。すべてのコンテンツはスマートフォン,タブレット,コンピューターなどのデバイスでの利用が可能である。
2013年3月にベンダー探しを開始していた市教育局は,受け取った14プロポーザルの中からAmazon社を選んだ。市の契約選考委員会はすでに,Amazon社と契約を結ぶことを満場一致で承認している。8月末には,教育政策委員会(Panel for Educational Policy)が投票にかけて正式に承認し,9月にはプラットフォームが開設される見通しであった。しかし,全米視覚障害者連合(National Federation of the Blind: NFB)から,視覚障害のある学生には,Amazon社のデバイスを使って電子ブックをナビゲートし,イラスト,グラフィックス,数学記号などにアクセスするのは難しいとして,契約に反対する書簡が2度にわたりCarmen Fariñaスクールチャンセラーに送られてきた。これを受けて,教育政策委員会は,会合の前日に投票の延期を決定し,新しい計画作成に取り組むことになった。この変更を知ってNFBは市への抗議は中止したが,Mark Riccobono会長は,「私たちは,視覚障害などにより印刷物を読むことが難しい読者困難(print disability)の学生たちの権利に関心をもつすべての人々に,アクセスの平等と教育の平等は同一であることをFariña氏に知らせるよう,呼び掛け続ける」と語った。
カリフォルニア大学出版局(University of California Press: UCP)は2015年1月,編集者と査読者によって生み出された価値が,研究コミュニティーに伝わることを目指して,オープンアクセス・メガジャーナル,“Collabra”プログラムを開始したことを発表したが(vol. 57, no. 12の本欄にて既報),その最初の論文“Implicit Preferences for Straight People over Lesbian Women and Gay Men Weakened from 2006 to 2013”(社会心理学)が公開された。
論文には,方策,コードブック,データの排除,操作,サンプルサイズの決定方法などが含まれており,透明性が高められている。3名の著者,Erin Westgate(バージニア大学心理学),Rachel Riskind(ギルフォードカレッジ助教),Brian Nosek(オープンサイエンスセンター専務理事)がオープン査読を選んだことにより,2名の査読者や編集者との署名入りのやり取りも論文とともに掲載されている。論文はNew York Times,New York Magazine,U.S. News and World Report,International Business Timesなどの新聞・雑誌に加え,数多くのWebサイトでも紹介された。発表後2週間で,HTMLでの閲覧が2,640回,PDFでのダウンロードが167回に達したことが報告されている。
Amazon社は,2015年7月1日以降は,電子書籍の定期購読サービスKindle Unlimitedの利用者が電子書籍を借りた回数ではなく,読んだページ数に基づいて,グローバル基金から著者と出版社に支払いをする方式に変更すると発表していたが,変更後最初の支払額が明らかにされた。グローバル基金は,“Kindleセレクト”に電子書籍の独占販売権を提供した著者・出版者間で毎月,ある計算に基づいて分配されることになっていた。旧方式で計算された6月は1冊の電子書籍が借りられるごとに約1.34ドルが支払われた。グローバル基金がこれまでの最高額1,150万ドルに達した7月には,読まれた1ページに付き0.58セントが支払われた。
電子書籍やデジタルリーディングに焦点を置くブログ,“Digital Reader”によれば,作家のKate Wrath氏は,ある作品がトータルで36万8,924ページ読まれ,2,132.07ドルを得ることができた。これは,795名が最初から最後のページまで読まれたことと同じで,1冊2.68ドルの計算になる。Kindle Storeでの販売価格は1冊2.99ドルで,Kate Wrath氏の取り分は2ドルを下回ることを考えると,新しい計算方式は,実施前には一部には反対の声もあったものの,著者にとって有利なようである。Kindle Unlimitedが提供する電子書籍は100万タイトルを超えて増え続けており,グローバル基金の額も,2014年5月の120万ドルから着実に増加し続けている。
日本航空(JAL)とNTTコミュニケーションズ,東レは8月17日,「IoT」(Internet of Things:モノのインターネット)を活用した,屋外で作業する空港作業員の安全管理システムの共同実証実験の開始を発表した。
この実証実験では,那覇空港の地上エリアで,荷物の輸送や航空機誘導などを行うJAL作業員が,東レが開発した機能繊維素材「hitoe」を活用したウェアを着用する。「hitoe」は着衣するだけで心拍数や心電位を取得できる機能繊維素材で,このウェアから取得した心拍数などのバイタルデータなどは,トランスミッターとスマートフォン経由でNTTコミュニケーションズのクラウド基盤に送信される。このデータに基づいて,作業員の熱ストレスや疲労度などを安全管理システムで推定した結果を,JALオフィスからリアルタイムに遠隔モニタリングする。
将来的には,空港以外の労働環境での作業者安全管理サービスとして事業化することを目指している。さらに福祉介護施設や自宅での高齢者見守り分野などでの活用も想定している。
みずほ情報総研とみずほ銀行は8月28日,IoTと人工知能に関する産業・社会の動向調査の結果をまとめた「IoT(Internet of Things)の現状と展望―IoTと人工知能に関する調査を踏まえて―」を発表した。
本報告書では,1)IoTの概要,IoTがもたらす経済価値,産業別のユースケース,2)IoTに関する国内外の動向,普及に向けた課題,日本企業のIoTへの取り組みと方向性,3)移動・物流,ライフスタイル,産業・モノづくりにおけるIoTの先進事例と展望,4)IoTを実現する情報処理基盤や人工知能に関する動向や展望,5)IoTや人工知能分野の第一線で活躍する方々へのインタビュー,について調査している。
佐賀県生産振興部,佐賀大学農学部,株式会社オプティムは8月27日,農業IT分野において三者連携協定を締結した。佐賀大学農学部の農業に関する基礎的な学術知見,佐賀県の農業に関する実用的な知見・ノウハウ,オプティムのIoTテクノロジーを融合させ,世界No.1となるIT農業の実現を目指すとしている。
具体的には,佐賀県の農業関係試験場や,佐賀大学附属の全10農場で,ドローン,IoT,ウェアラブル技術を活用して,農地の温度,湿度,雨量などの各種データを蓄積。収集したデータを,オプティムが開発しているドローン対応ビッグデータ解析プラットフォームに蓄積し,管理分析を行う。これにより,家畜や作物の状態管理を行い,より高品質な農作物の生産を目指すとともに,ウェアラブル技術を活用した農家への技術支援も行う。佐賀を「世界No.1の農業ビッグデータ地域」にし,「“楽しく,かっこよく,稼げる農業”を佐賀からITを使って実現する」としている。
日本国内で,定額で映画やテレビ番組を好きなだけ見られるサービスが相次いでスタートしている。アマゾンジャパンは8月27日,9月下旬から「プライムビデオ」をスタートさせると発表した。年会費3,900円のAmazonプライム会員に向けて,映画やテレビ番組を追加料金なしで提供する。日本や米国の映画,テレビ番組,アニメのほか,話題のバラエティー番組やライブ映像などが見放題としている。スマートフォンやタブレット,ゲーム機器,スマートTVなどを使って見ることができる。
一方,9月1日には,「Netflix」日本版がスタートした。月額650円で,映画,ドラマ,ドキュメンタリー番組のほか,邦画やテレビ番組をさまざまなデバイスで見ることができる。Netflixは米国の動画配信サービスで,世界50か国でサービスを提供しているが,日本ではこれまで利用できなかった。同じ米国の動画配信サービスHuluが2011年から日本でのサービスを開始しており,海外発の大手定額動画配信サービスが日本でもそろう形になった。
また,「定額音楽ストリーミングが続々登場,アーティストの反発も」(vol. 58, no. 5の本欄にて既報)でも紹介したように,定額音楽ストリーミングサービスの提供開始も相次いでおり,9月3日にはGoogleが「Google Play Music」の日本での提供を開始した。このサービスは月額980円で国内外の楽曲3,500万曲に無制限にアクセスできるとしている。