2017 Volume 60 Issue 3 Pages 182-191
ビッグデータ時代を迎え,今後,国全体としてのデータ活用力を向上させていくには,データサイエンティストに代表される高度データ利活用人材の育成だけでなく,地域社会を構成する個々の企業,自治体等におけるデータ分析力の底上げも併せて重要な課題となる。そのためには,従来のように企画統計部門等,専門の組織に属する職員に対してのみではなく,これからはあらゆる部門の職員に対しても一定かつ,基本的なデータ分析能力の習得が求められてくる。その「あらゆる部門の職員を対象とした基礎的データ分析能力習得」に関する九州テレコム振興センター(KIAI)としての研修事業の構築経緯,ならびにこれまでの取り組みとその結果等について紹介する。
一般社団法人九州テレコム振興センター(Kyushu Island Alliance of ICT: KIAI。以下,KIAI)注1)は,九州における地域情報化を幅広く支援していくため,情報通信分野における広域的な産学官連携の推進を図り,豊かな地域社会創出に寄与することを目的として1988年に設立された。2017年3月時点で九州内の情報通信分野の産学官関連団体180会員より構成されている。発足当初は旧郵政省九州電気通信監理局所管の社団法人であったが,2013年より内閣府認可の一般社団法人へと組織形態が変更している。主な事業活動は,情報通信分野における(1)調査研究,(2)各種コンサルティング,(3)普及啓発,(4)人材育成である。中でも情報通信基盤整備が拡充してきた現在では,地域におけるICT利活用推進といった点が各事業活動における大きなテーマになってきており,そのICT利活用推進の大きな源である「人材」の育成に関しては,今後のKIAIの事業活動においても大変重要視している内容である。今回紹介するデータ分析研修事業もそういったKIAIの事業活動背景から生まれてきたものである。
現在ではビッグデータといったキーワード自体は,ごくごく一般的なものとなってきてはいるが,わずか4~5年ほど前までは,地域社会全体において当該キーワードは聞き慣れない,あるいはその内容に関しても十分な認知度すらなかった時代であった。そういった当時,総務省においてビッグデータ等を使いこなす高度ICT人材の育成に向け,2011年度および2012年度にかけ「高度ICT利活用人材の能力・要件・人材に関する調査研究」1)が実施され,当該結果に基づき,2013年度には具体的な研修用教材も作成,公開された。KIAIとしては研修用教材として当時公開されたテキスト,育成カリキュラム,指導ガイドライン,講師指導例動画をすべて提供してもらい,約2か月間をかけ,それらの内容を掌握したうえで具体的な研修事業を実施することとなった。
その当時,筆者が属するKIAIにおいても,やがて地域にも本格的に訪れるであろうビッグデータ時代に対し,従来のような「ICTを使いこなせる人材育成」だけでなく,これからは「ICTを活用し新たな価値を産み出せる人材育成」事業がより重要性を増してくるであろうと感じており,その具体的内容をいろいろと模索しているところであった。そのため,KIAIとしては,この総務省の研修用教材は大変有効になると考え,ほぼ公開同時期という,大変早い段階で入手し,新たな研修事業構築に向けた検討を開始することとなったのである。本教材はビッグデータ導入に向け必要となるさまざまなスキル形成を図るための研修事業を想定しているものであるが,KIAIとしては,ビッグデータ導入スキル形成という研修コンセプトは保持しつつも,研修事業自体の主目的を「地域におけるデータ分析力の裾野を広げていくこと」と設定した。これは地域情報化を幅広く支援していくというKIAIそのものの活動コンセプトと整合させる,という観点もあるが,地域全体としてデータ活用を幅広く推進していくためには,それを先導していく専門部門の人に対する高度研修事業のみならず,日々多様なデータと向き合っているさまざまな業務部門の人に対する一定のデータ分析スキル習得の機会が今後より一層必要になってくると考えたからである。さらにそういう機会が当時,地域ではほとんどなかった点,高度研修事業実施体制の維持はKIAIとしては困難であった点等を踏まえた故でもある。よって,研修受講者は,基本的にデータ分析にこれまであまり携わったことがない,たとえば,主に自治体,企業における営業,総務,企画部門の職員など,非技術系,かつデータ分析などに関する未経験者,初心者が対象となった。
また,入手した研修教材は,ビッグデータ導入に向け,データ分析業務全部門を網羅する大変有意義な内容となっていたが,分析手法の実践演習に関しては,「R」を活用したグラフ演習(可視化演習)程度にとどまっていた。当時の各職場における「R」の普及状況,また,より幅広い分析手法の実践演習の必要性等も考慮し,分析ツールは「R」ではなく一般的に普及している「Excel」へと変更し,「Excel」を活用したデータ分析演習をより多く盛り込むこととした。さらに研修で習得したさまざまな分析スキルを実際に総合的に活用できるようなグループ演習メニューも追加するなど,具体的な研修内容に関しては,KIAI独自のアレンジを多々加えていった(表1)。
以上のような観点に基づき,KIAIとしては初のデータ分析研修事業となる「Big Data Boot Camp in 九州」(第1回・第2回は2日間。第3回は1日)が2014年度に福岡で実施され,予想を上回る受講者数もあり,当該年度,計3回の開催に至ったものである(図1,図2)。KIAIのWebサイトを通じた一般公募の結果,全87名が参加した。参加者の業務属性としては企画系の業務部門に携わる人が最も多かった。なお,参加企業としては情報通信関連の企業が比較的多数を占めたが,金融業,運輸旅客業,放送事業等,その他幅広い分野からの参加も得られた。
Big Data Boot Camp受講者に依頼したアンケート結果は図3~図5のようになった(第3回は開催日程を短縮したうえでの試行的実施でもあり,前2回とは内容が若干異なる関係から,アンケートは第1回・第2回受講者の回答者(N=52)が対象となっている)。各カリキュラムの満足度,ならびに理解度は図3,図4のとおりで,初の試みとしてはある程度の評価を得られたと感じている。特にKIAIとして独自の内容を用意した「分析手法」に関しては,総合満足度トップという結果となり(図5),今後の研修事業の方向性検討に向け大きな参考となった。
Big Data Boot Camp実施時のアンケート様式には研修事業の総合評価項目が設けられていなかったこと,また全体的な集計結果値においても,各カリキュラムの評価指標に顕著な開きがみられなかったこともあり,全体としてなかなか特色的なことが見い出せなかった。そのため,改めて,満足度結果について主成分分析も行い検討を試みた。固有値が1以上となるものが第一主成分と第二主成分しかなかったため,その2つの主成分のみを採用している。第一主成分はすべて満足度とプラスに関係している点から,総合満足度と考えた(図6)。また第二主成分は「総合演習(2)・(3)」「分析手法」「分析結果の図解」が高いほどプラスに働くものとなっている観点から,実践的な分析研修内容と解釈した(図7)。そうしたうえで,各主成分得点を散布図上に展開したのが図8である。
図8上でも明確な特色はつかみにくく,若干の差異でしかないが,本研修事業受講者のアンケート結果によれば,どちらかといえば,実践的な分析研修内容に評価が集まっているとも見受けられる。なお,これは研修終了後に受講者に直接意見を聞いた際にも,「Excelでの分析演習時間をもっと十分にとって欲しかった」「実務にもっと関連づけできるような演習内容が欲しかった」といった声が大変多く聞かれた点とも合致する。
初のデータ分析研修事業となった本事業の実施結果を通じ,KIAIとしては,ビッグデータ導入を見据えた規模感の研修カリキュラムというより,身近な業務に関連性をもたせた分析演習にウエートを置きつつ,分析業務全体の基本プロセス等も併せて体系的に理解できるような規模感の研修カリキュラムとする必要性を強く感じた。そういった観点に基づき,改めて研修事業の再編に取り組み,Big Data Boot Campにて実施した内容(表1)とは異なる,KIAI独自の研修メニューに基づくデータ分析研修事業が確立できたのである2)。
新たな研修カリキュラムを再構築した後,改めて2015年度より積極的に事業展開を進めていった中,本研修事業が大分県(商工労働部情報政策課)の目に留まり,当時,商工労働部情報政策課が進めようとしていた人材育成事業に本研修事業がうまく活用できるのではないか,ということに至った。この人材育成事業の背景にあった事業とは「ICT活用促進による中小企業のイノベーション創出」で,これは「県内の中小企業に対し,経営課題の解決や新サービス創出が発揮できる総合的なデータ分析スキルを有する人材育成事業を進めていくことで,企業の成長や経営のデジタル化を通じたさらなるイノベーション創出を目指す(同課産業情報化推進班主幹 足立竜二氏)」ことを主目的として掲げており,大きく以下の事業項目から構成されていた。
中でも研修グループに必ず地元ITベンダーを参加させた研修実施体制を構築した点は特徴的と考えられる。研修期間を通じた参加地元中小企業と地元ITベンダーとの自然自発的なネットワーク形成により,参加企業が受講後,自社に戻り,データ分析を活用した新たなICT利活用に取り組む際,培われた双方のネットワークを基に,単なるサポートのみならず,そこで新たなビジネスマッチングの創出も図れるような土壌作りを本研修事業全体を通じて生成させようとするものである(図9)。
大分県との研修事業に関しては,最終的に大分県内地場中小企業121社が参画することとなり,当該企業に対し,2015年度から2016年度にかけ,全部で10回のコースによる研修カリキュラムを実施するという,これまでにない規模感の研修事業となった。具体的な研修実施に際しては,参加企業全体を11のグループ(A~K)に分け,1グループ約10社単位での運営体制をとった。この際,単純に11グループに分けるのではなく,一部地理的観点からまとめられたグループもあるが,基本的には研修参加目的に即したグループ編成が行われた点も大変興味深い取り組みである(表2)。
なお,このように地場中小企業を対象とした大規模なデータ分析研修を自治体が先導して行った事例は,少なくとも筆者の知りうる限りでは,九州初であり,全国的にみてもまずほとんど例がないのではないかと思われる。データ分析に限らず,これまでも積極的な情報通信施策を進めてきた大分県ならではの取り組みである。
10回に及ぶ研修内容は表3のとおりで,全員参加型の座学研修を第1回と第8回の計2回実施した他はすべて,各グループ単位での研修である。第4回,第7回には課題解決型総合演習を取り入れ,さらに分析手法研修が一通り終了した後半の回には,事例演習的な内容を増やすなど,できる限り理解度を深める工夫にも努めた(図10)。
受講者のアンケート結果(N=231)は図11~図13のようになった。考察的な点は次章で述べることとし,本章では一般的な結果概要のみ記載する(全体研修の第1回・第8回は除外,また第7回は別形態のアンケートを実施したため除外している)。
理解度,難易度のアンケート結果(図11,図12)から読み取れるように第4回と第6回は受講者にとって難しい研修内容となったように見受けられる。第4回は受講者にとって初の課題解決演習となったため,難易度が急に増したものと思われる。第7回も同形態のアンケートをとっていれば,おそらく同様の結果になっていたのではないかと推測する。第6回については,事例から課題を読み解き,ロジックツリー作成を行い,当該ロジックツリーを活用したアンケート調査票の設計を行う,といった内容が中心となり,それまで行ってきたExcelを活用したサンプルデータ分析とは少し方向性の異なる内容のカリキュラムを組んだためと思われる。また,ある意味当然ではあるが,第5回と第9回は復習研修がメインとなったため,理解度ならびに難易度は相応の値となっている。
講師の練度の部分も大いにあると反省しているが,定型的なサンプルデータでの分析研修に一定の理解度が得られても,具体的事例に基づく課題解決型の研修カリキュラムに対してもっと高い理解度を得られるような研修結果を創出できなければ,各受講者の実業務におけるデータ分析の応用,つまりはKIAIが目的として掲げるデータ分析力の裾野拡大にまではつながっていかないものと思われる。実施者サイドのスキルをさらに向上させていく必要があると改めて痛感させられたところである。
また,第4回実施後に,受講者に対し「データ」の取り扱いに関する研修前後の意識の変化について調査したところ,図13のような結果(N=39)が得られた。
全研修終了時点で同様の調査を行っていないのが残念であるが,研修を通じ,各受講者のデータに対する意識そのものを少なからず変化させることができたのではないかと思っている。
Aグループ | 新サービス,商品開発 |
B・Cグループ | 広告,販売促進 |
Dグループ | マーケティング高度化 |
Eグループ | 需要予測の高度化 |
Fグループ | 生産管理,品質向上 |
Gグループ | リアルタイムマネジメント |
Hグループ | リソース最適配置 |
Iグループ | 業務プロセスの改善 |
Jグループ | 大分県西部地区 |
Kグループ | 大分県北部地区 |
開催回 | 概要 |
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第1回(2016年1月19日) 参加者全体研修 [座学+グループ演習] |
・研修事業全体概要説明 ・データ分析の意義,目的等 ・データ分析の基本プロセス ・分析演習イントロ |
第2回(2016年1~2月) 各グループ実施 [個人演習] |
・相関分析 ・回帰分析,数量化理論 ・標準偏差 ・基本統計量 |
第3回(2016年2~3月) 各グループ実施 [個人演習] |
・第2回復習 ・ヒストグラム ・平均値検定 ・ポートフォリオ分析 |
第4回(2016年3月) 各グループ実施 [課題解決 グループ演習] |
・国勢調査データ等を基に作成した演習データによる総合分析演習 <演習課題> 学習塾を新規開設するに最適な市町村はどこか |
第5回(2016年5~6月) 各グループ実施 [個人演習] |
・第2~3回内容復習 ・コンジョイント分析 ・SWOT分析 |
第6回(2016年6~7月) 各グループ実施 [個人演習] |
・ロジックツリー分析 ・アンケート調査票作成~分析演習 ・カイ二乗検定 ・線形計画問題 |
第7回(2016年7~8月) 各グループ実施 [課題解決 グループ演習] |
・大分県内のさまざまなオープンデータを基に作成した演習データによる総合分析演習 <演習課題> 県内における新たな6次産業展開に向けたパイロット 候補地の選定 |
第8回(2016年9月2日) 参加者全体研修 [座学] |
・講演 AIをはじめとした最新のデータ分析事情 ・成果発表プレゼン 研修参加企業3社より研修成果の活用状況を発表 |
第9回(2016年10月) 各グループ実施 [個人演習] |
・第6回までの総復習 ・事例演習 (右脳をいかに使いこなせるか) ・KJ法 ・連関図 |
第10回(2016年11~12月) 各グループ実施 [個人演習] |
・事例演習 (ヒストグラムを使いこなせるか) (基準化によるデータ比較がきちんとできるか) ・ABC分析 ・アソシエーション分析 |
社員の基礎的データ分析向上を目的として,KIAIのデータ分析研修による試験的な取り組みを2017年1~3月に実施しており,現在,情報通信本部および営業本部の若手社員を対象に,複数の研修カリキュラムパターンによる評価を行っているところである。
3.2.2 九州工業大学における実施大学組織運営においてもデータを活用したさらなる事業高度化を図っていくため,事務局職員に対する新たな研修事業としてKIAIの研修カリキュラムを活用し,2017年3月に「データサイエンティスト研修」を開催した。
3.2.3 大分県若手経営指導員等に対する実施先に述べた大分県での研修事業との関係があった故でもあるが,2016年度の大分県内若手経営指導員等キャリアアップ研修にKIAIのデータ分析研修が組み込まれた。KIAIが目指す地域におけるデータ分析力の裾野拡大に向けては,各団体構成員そのものの人材育成事業の実施のみならず,地域にてそれらをサポートする人材をいかに確保していくか,といった点も併せて重要な取り組みであると思っている。こういった商工会,商工会議所等に在籍する経営指導員が,その役割を担えるようになると,地域のさまざまな中小企業のデータ利活用も大きく前進していくのではないかと思われ,このような研修機会の重要性を改めて認識したところである。
大分県でのデータ分析研修事業(3章1節)においては,各研修メニューの理解度と業務への活用度との関連性等といった内容を適宜調査していくような計画的なアンケート調査を行えないままであったが,唯一,第7回実施時に,以下のような細かなアンケート調査が実施できた(表4)。回答者数が大変少ない結果(N=27)となり,あくまでも本結果の範囲内ではあるが,改めて,研修成果の実業務への活用に関する大きな課題は確認できたと考えている。
「研修事業構成要素」「研修成果の具体的活用度」ともに5段階評価(5が最も高い評価)での回答としていたので,研修事業構成要素のうち,「研修内容」「講師力量」「使用教材」「使用分析ツール」といった研修事業構成要素の主要因について,「研修成果の具体的活用度」との相関,ならびに,各要素自体の満足度(評価4,5の回答数)を併せて一覧にしたのが表5である。
ある意味,予想のつくことではあるが,研修自体に対する評価の高さと,その習得成果の実業務への活用度自体は必ずしも相関しているわけではない,ということが読み取れる。唯一,「使用分析ツール」のExcel活用については,一定の相関が見受けられるようではある。それでは,その成果活用に際し,どういう点が課題となっているか,その一番の要因としてあげられた回答を集計したグラフが図14である。
「業務多忙」に関しては,第三者的になかなか対処のしようがないが,全体として約6割を占める「理解度不足」「社内データが未整備」「相談相手がいない」に関しては,たとえば,先の3章2節3項でも述べたが,地域におけるデータ利活用支援業務に携われる人材の存在一つで,これらは一気に活用への方向に進んでいけるのではないかと思われる。
一方,研修成果を実業務に活用するに際し,具体的にどういう分析手法が取り入れやすいか,という問いに関しては図15のような結果になった。
あくまでも今回だけの結果ではあるが,たとえば,地域におけるデータ利活用促進に向け,その支援業務を担える可能性をもった人材が現実的に存在する際,あるいは当該業務を担う人材を新たに育成する際,当該対象者に対し,すべての分析スキルを習得したうえでその任にあたってもらう,ということではなく,まずは,図15に示されたような分析手法のみを先行して集中的に習得させていくということも,ある意味現実的なアプローチであるかもしれない。そうすることで,地域におけるデータ利活用業務支援者自体の裾野が拡大していく,ということも可能になってくるのではないかと考える。
なお,大分県での研修事業においては履修した分析手法別の理解度調査を行っていなかったのだが,その後の研修事業においては,基本的研修カリキュラムに組み込んでいる5種類の分析手法に関し,個々の理解度調査(5段階評価)を行い始めている。まだ標本数が少ない(N=29)段階ではあるが,各分析手法の理解度の平均とバラツキ(標準偏差)が図16に示されている。
理解度自体は全体の平均的ラインにあるが,バラツキが多いもの(回帰分析)や,平均値も低くバラツキも多少大きいもの(平均値検定),といった例もあり,もう少しデータを蓄積し,各受講者のその他データとも照らし合わせながら検討していく必要がある。各分析手法の理解度は,図15で示したような受講者の実業務への活用部分にも大きく影響を及ぼすものでもあり,今後とも,適宜結果分析を行いつつ,研修教材,指導方法等に関する継続的な改善に努めていきたいと考えている。
質問項目 | 回答方法 |
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研修事業構成要素の評価 | 下記項目について 5段階で評価 ・研修内容 ・講師力量 ・使用教材 ・使用分析ツール ・実施スケジュール |
研修成果の具体的活用度 | 5段階で評価 |
成果活用に際しての課題 | 順位付きで複数回答 |
活用できそうな分析手法 | 順位付きで複数回答 |
研修事業 構成要素 |
研修事業構成要素の 評価値と 研修成果の具体的 活用度合値との相関 |
研修事業構成 要素の満足度 |
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研修内容 | 0.49 | 88.5% |
講師力量 | 0.38 | 92.3% |
使用教材 | 0.17 | 76.9% |
使用分析ツール | 0.52 | 76.9% |
本研修事業では,基礎的なデータ分析スキルの習得を図っていくことが目的だが,その習得結果段階として最も重要視している点は,一定の分析手法が使えるようになる,ということではなく,そういった分析手法を活用し,「データを理解したうえで業務課題と向き合う」,あるいは「業務課題そのものを改めて客観的に見つめ直す」,さらには「組織の問題点とは何なのかということを再確認する」,といった組織運営における基本的な業務プロセスを硬直化させない意識を改めて育む点にあると考えている。日々目まぐるしく変化していく高度情報化社会に適合していく能力を保持していくことは,組織の将来的存続・発展に向け大変重要であるが,その適合能力の源とは,硬直化しない組織運営体制にあると筆者は考える。そしてその源を地域全体で推し進めていくための大きな要因の一つが,KIAIが本研修事業の目的として掲げている「地域におけるデータ分析力の裾野拡大」である。
一つのささやかな事例ではあるが,前述した大分県の研修事業にて,研修途中段階での成果発表会が開催された。わずか数社の発表であったが,どれも新たな業務プロセスを起こしていこうとする社内意識が芽生え,それを実行し始めた動向が紹介されたものであり,個人的には大変素晴らしい成果であったと感じた。ささやかでもよいので,こういった成果を一つでも多く地域で積み重ねていくこと,さらにはそういう動きをサポートする多くの仲間を地域につくっていくこと,それが本研修事業における今後の大きな展望である。
KIAIを活動拠点とし,九州広域を対象としたさまざまな情報化関連事業を産学官連携のもと,推進。2014年度からはデータ分析研修事業に本格着手。初心者等を対象とした独自の研修カリキュラムを構築し,現在,九州内の企業,自治体等に対し幅広くデータ分析研修事業を展開している。総務省地域情報化アドバイザー,ICT地域マネージャー,地域力創造アドバイザー兼任。