岡山医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4528
Print ISSN : 0030-1558
平成23年度岡山医学会賞
テロメラーゼ依存性腫瘍融解ウイルス療法の骨・軟部肉腫に対する前臨床的検討
佐々木 剛田澤 大長谷井 嬢国定 俊之吉田 晶橋本 悠里矢野 修也吉田 亮介宇野 太香川 俊輔森本 裕樹浦田 泰生藤原 俊義尾﨑 敏文
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2012 年 124 巻 2 号 p. 105-110

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抄録

 骨・軟部肉腫は, 一部に治療抵抗性で予後の悪い症例が存在するため, 新たな治療法の確立が重要な課題である. 我々は, 5型アデノウイルスを基本骨格として, テロメラーゼ活性に依存して増殖する腫瘍融解ウイルス(OBP-301)や, coxsackie and adenovirus receptor(CAR)陰性の腫瘍細胞に感染するファイバー改変型ウイルス(OBP-405)を用い, 骨・軟部肉腫細胞に対する抗腫瘍効果を検討した. 14種類の骨・軟部肉腫細胞株に対してOBP-301の細胞障害活性を検討し, 12種類の細胞株でOBP-301に感受性を認めた. また, OBP-301の細胞障害活性はCARの発現と相関していた. さらに, テロメラーゼ活性の低い細胞に対しても, 5型アデノウイルスの複製に必須のE1Aによりテロメラーゼ活性の増強効果がおこり, 強い抗腫瘍活性を示すことを明らかにした. 次に, 骨肉腫脛骨同所性移植動物モデルを作成しOBP-301を投与したところ, OBP-301投与群では対象群と比べて有意に腫瘍増殖を抑制した. 最後に, OBP-301に感受性を認めなかったCAR陰性細胞株に対してOBP-405を用いて検討し, OBP-405が有効に作用することを確認した. OBP-301やOBP-405を用いたウイルス療法は, 骨・軟部肉腫に対する新たな治療法となる可能性がある.

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© 2012 岡山医学会
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