岡山医学会雑誌
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Actinomycin Dの高等動物中枢神経系に対する作用
平 光雄
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1973 年 85 巻 5-6 号 p. 165-182

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抄録

1. Actinomycin Dをイヌの髄液内に投与すると, 3~5日の長い潜時で動物は全身痙攣を起こした.この痙攣量は0.025mgであり,それによって42例中33例に痙攣が見られ,その平均潜時は89.5±10時間であった.痙攣型は定型的な全身痙攣であり,動物は激しく痙攣を繰返したのち全例死に至った.
2. Actinomycinic acidを髄液内に投与しても痙攣は認められなかった.
3. ネコの髄液内にactinomycin Dを投与して数日後に,動物は脳波上定型的なgeneralized seizure dischargeを反復して示した.この場合まず高振幅spikeの群発が起こり,これにspike and waveまたはpolyspike and wave complexがつづいた.やがてspike and wave complexの出現頻度がしだいに減少し,発作波が終了した.またactinomycin D投与により, hippocampusに顕著なspike dischargeが見られることがあった.
また痙攣前駆期において, myoclonic jerkの発生と同時に, hippocampusを除く全誘導に8cpsの規則的な波が見られた.
他方, actinomycinic acidの投与によっては,脳波上にも顕著な変化はあらわれなかった.
4. Actinomycin Dと同時にDNAを髄液内に投与し,その拮抗作用の有無をしらべたが,このDNAの投与によっては, actinomycin D痙攣は防止できなかった.
5. Actinomycin Dとmethionine sulfoximineとの干渉作用を検討し,痙攣閾量以下のmethionine sulfoximineはactinomycin Dの痙攣作用を妨げないが,逆に痙攣量の半量付近のactinomycin Dはmethionine sulfoximineの痙攣作用を抑制することを観察した.
6. GABA, GABOB, S-GABAのactinomycin D痙攣に対する確実な抑制作用は,ほとんど認められなかった.

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