岡山医学会雑誌
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生体負担時の尿中蛋白(特に熱可溶性蛋白)及びそのDonaggio反応について
大森 祥夫
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1980 年 92 巻 9-10 号 p. 1007-1014

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抄録

暑中の炎天下に於けるサッカー試合という生体負担を行った選手の尿を使って,生体負担後の尿中に現れる蛋白-特に熱可溶性蛋白とDR及びD特異活性について検討し,以下の知見を得た.
1) 生体負担(運動負荷)量と排泄される蛋白の種類との関係は今回の実験からみれば, β.γ-glob. の上昇よりalb., α1α2glob. の上昇程度が大きく,特にalb., α1-glob. の排泄が負荷運動量に比例する傾向が認められる.
2) 尿の電気泳動後各セクションのD特異活性値はalb., α1-glob. 領域においてかなりの高値を示すが,酸性加熱除蛋白という処置によって更に上昇することを考慮するとα1-AGのD特異活性値はalb. より大であり,蛋白中でも最大のものではなかろうかと推測される.
3) 尿中蛋白のD特異活性値は,血中のそれに比べ小さい.しかし限外濾過尿(蛋白を含まない)によって稀釈すればその値はかなり上昇する.
4) 生体負担後尿において酸性加熱除蛋白という処置によっても尚残存する蛋白-即ちthermosoluble proteinはα1-AG, α1-AT, Zn-α2, α2-HSでありその他には一部の除蛋白されていないalb. であろうと推定した.そしてこれらの蛋白からalb. をのぞけば, α1-AGとその他のglycoproteinとの比は約3:1である.しかしこの組成は生体負担の種類によって異なるものと思われる.

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