2022 年 7 巻 2 号 p. 32-36
【目的】開発した乳腺円状部分切除器具を用いた乳房温存手術症例の実施状況を検討する。
【患者と方法】24 名の乳癌患者に乳房部分切除術を行った。乳房腫瘍は円状切除範囲に含まれるように, 器具で乳房組織を把持したのち, 器具の円周に接して切除を行い, 切除に要した時間を計測した。ホルマリン固定後, 5 mm 厚のスライスに切り出し, 腫瘍から組織標本の両縁までの距離を測定した。
【結果】切除時間の中央値は 3 分 27 秒 (範囲, 1 分 32 秒~6 分 46 秒) であった。腫瘍左縁から左側切除断端までの平均距離と, 腫瘍右縁から右側切除断端までの平均距離に有意な差はなく (左 : 1.98 ± 0.12 cm, 右 : 2.02 ± 0.11 cm) , 極端に切除標本の左右どちらかに腫瘍が偏位して切除されることはなかった。
【結語】乳腺円状部分切除器具は, 乳房温存手術における乳房の円状部分切除において, 比較的短時間に, 腫瘍を切除断端の一方に偏位することなく切除することがを可能であった。