歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
口腔消化器系粘膜上皮の単一細胞間の電気的低抵抗結合の様式に関する研究
菅野 義信森田 之大松井 洋一郎長沢 亨
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1971 年 13 巻 4 号 p. 576-585

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抄録

イモリ (Triturus pyrrhogaster) の胃および小腸粘膜上皮細胞について, 顕微鏡強拡大下で細胞の1個1個を確認した。通電電極および電位記録電極を同一あるいは隣接する細胞にそれぞれ刺入し, 電子管装置による矩形波直流電流により細胞膜の電気抵抗を測定する方法で, 細胞間連絡を中心に膜の電気的性質を詳細に調べた。
1. イモリ消化器系粘膜上皮の細胞は, 室温25℃ に比し5℃ 程度の低温下, 1.5時間以内では電気的性質にあまり大きな変化を示さなかった。
2. 通電量を5×10-8Ampとして細胞内通電を行い, 通電点より順次遠位に隣接する細胞からの膜抵抗に基づく電位変化を測定した。胃粘膜では, 一層の粘膜上皮細胞間を電流の2次元的に一様な拡がりがみられ, 電位変化はBessel函数の理論値に一致する緩やかな減少を示した。胃上皮細胞相互の結合比は最低0.32, 最高0.77, 平均0.53±0.02 (S.E.) の正規分布を示す。
3. 小腸粘膜上皮では, 通電点より順次遠位よりの取得電位が急速に減少する場合と, 遠位の細胞からの取得電位がそれより1つ近位の細胞からの取得電位より大きい場合が測定された。結合比は最低0.04, 最高0.69, 平均0.18±0.03 (S.E.) とその偏差は著しい。
通電細胞と周辺に隣接する細胞との結合比も胃では一様であるが, 小腸では結合の程度の差が著しい。胃と小腸とでは粘膜上皮細胞相互間の機能的結合状態に大きな相違がある。微細膜構造を膜の機能的研究との関連において捉えることの重要性を示唆した。

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