抄録
Colchicineの歯牙硬組織形成障害作用を解明する目的で, ウサギ切歯象牙質を実験材料とし, 酢酸鉛注射による硬組織内時刻描記法を応用して, 組織学的検索を行なった。その結果, colchicine注射後24時間以内に狭い幅のhematoxylin不染層に続いて, 異常濃染層が出現し, またこのhematoxylin異常濃染層がmicroradiogramでは高度の石灰化像を示しており, 組織化学的には異常な性状を有することが確かめられた。象牙芽細胞については, 光学顕微鏡下においてcolchicine注射後8時間から形態的変化が認められ, 12時間後ではその変化が極めて著しく, その後徐々に正常に復する像が観察された。一方血中Ca量はcolchicine注射後12時間で, 無機P量は24時間でそれぞれ最低値を示し, これらの無機質の血中濃度は象牙質の高石灰化層の形成と量的には比例していないことが示唆された。
Microdensitonetryによる検索では, colchicine注射後24時間内に形成された象牙質においては, 全ミネラル沈着量および石灰化度/象牙質形成量の比が正常より減少していることが示された。