歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
a-g血清型のStreptococcus mutansの産生する非水溶性および水溶性多糖の生化学的ならびに形態学的特徴
薬師寺 毅
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1983 年 25 巻 3 号 p. 718-736

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抄録

a-gの血清型に属するStreptococcus mutansの19株の菌体外酵素がスクロースより合成した多糖の形態学的および生化学的な諸性状を比較, 検討した。
a/d/g型の菌体外酵素が合成した多糖は凝集塊を形成して沈殿し, 大量にガラス壁に固着する性質を有していたが, b/c/e/f型の酵素によって合成された多糖は均一に浮遊して, ごく少量しか壁に付着しなかった。a/d/g型では主として非水溶性画分 (IP) を, 一方b/c/e/f型では水溶性画分 (SP) を合成した。c/e/f型の各1株を除く他の菌株のIPにはフルクタンが検出されなかったが, 全ての菌株のSPは有意の量のフルクタンを含んでいた。全多糖中におけるグルカン量に対するフルクタン量の比は, a/d/g型の方が,b/c/e/f型より低い傾向にあった。
全血清型を通じてIP (主にグルカン) のα-1, 3グルコシド結合含量はSPのそれより高く, α-1, 6結合含量はSPの方が高かった。a/d/g型のIPとSPとはほぼ同程度の分枝をもつが,b/c/e/f型ではIPよりSPの方が高度に分枝していた。a/d/g型のIPはb/c/e/f型のIPに比べて, 1) α-1, 3結合含量が高く (α-1, 3/α-1, 6結合含量比が大), かつα-1, 3, 6分枝の割合が高く, 2) したがってα-1, 3グルカナーゼ感受性は高く (a型を除く), デキストラナーゼ感受性は低く, 4) また, 多量の高分子画分を含み, 固有粘度も高かった (b型を除く) が, 4) S.mutans菌体に対する凝集能 (α 型を除く) は弱かった。
a/d/g型のIPは周囲に突出線維を有する2本鎖線維と, 細い1本鎖細線維が単独あるいは互いにからみ合って網目あるいは球状構造を示し, 大きな凝集塊を形成していた。b/c/e/f型のIPではa/d/g型より2本鎖線維が短かく, 1本鎖細線維とからみ合って生じた凝集塊も小さく, またa/d/g型に認められた球状構造物は全く観察されなかった。
このようにS.mutansがスクロースより合成するIP (主にグルカン) は, その諸性状によって大きくa/d/g型とb/c/e/f型の2群に前者はさらにa型とd/g型, 後者はb型とc/e/f型に類別することができた。
一方, SPの諸性状は, あるいは各血清型を通じて変動がなく (α-1, 3グルカナーゼ感受性, メチル化分析, 形態学的特徴), あるいは変動が大きく (α-1, 6グルカナーゼ感受性, 固有粘度, 分子量分布), また一部の血清型間で共通性を示すもの (S.mutans菌体凝集能) もあったが, 性状の多くを通じて統一的なまとまりを示す類別はできなかった。

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