Physical properties of membrane lipids in rat salivary glands: involvement of cholesterol

抄録

ラット3大唾液腺由来リン脂質リポソームの膜物性に対するコレステロール (Cho.) の影響を2種類のスピン標識を用いてESR法で観察した。Cho. は組成既知の卵黄ホスファチジルコリン (PC) リポソーム中で濃度依存性 (0-400 mmol/mol of PC) に直線的な膜流動性低下を示し, この変化は脂質二重層の深部および浅部でも同様であった。各唾液腺のCho. 含量は約300mmol/mol全リン脂質であることから, 一定量のCho. を各腺由来リン脂質リポソームに組み込み, 流動性を測定したところ, 3腺に共通に流動性の低下が観察され, さらに, リン脂質のみでは3腺ともほぼ一致している流動性が, Cho. 添加によってその流動性低下の割合が異なり, 耳下腺>顎下腺>舌下腺の順であった。この傾向は脂質二重層深部でより大きかった。以上の結果は, Cho. が膜全体の流動性を調節するとともに, 各唾液腺特有のリン脂質と相互作用し, それぞれの膜特性を発揮させていることを示唆している。