抄録
Colony-stimulating factor-1 (CSF-1) は, 破骨細胞の生存・融合促進因子であり, 骨代謝に重要な影響を及ぼす. また, 破骨細胞は細胞外pHが低くなると活性化されるという報告もある. 本研究では単離した破骨細胞を用いてCSF-1による細胞分化促進に及ぼす細胞外pH変動の影響について, 融合現象とアクチンリング形成を分化の指標として検索した. 破骨細胞に500pM CSF-1を添加すると融合促進効果がみられるが, これは細胞外pH 7.0で最大となり, アクチンリング形成は, pH 6.8, 7.0で最も強く促進された. 形態的特徴としてpH 6.8の場合, 破骨細胞は融合作用が抑制され丸く小さく, pH 7.0, 7.2では, 細胞は丸みを帯び大きく広がり, pH 7.5の場合, 細胞は偽足を持ち遊走した. 一方, CSF-1無添加の対照群では, pH 6.8~7.5のいずれの群でも破骨細胞の融合促進作用も最終分化の指標であるアクチンリング形成も誘導されなかった.
以上のことより, 細胞外のpHの変動はCSF-1による破骨細胞の生存, 融合, 分化に影響を及ぼすことが示唆された.