歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
Generation of duplication or deletion mutants in Streptococcus mutans following homologous recombination-mediated random mutagenesis by integrational vector pVA891
Yutaka SatoYasuhito YamamotoHarutoshi Kizaki
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1998 年 40 巻 5 号 p. 506-514

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抄録

多くの細菌においてインテグレーションベクターは遺伝子操作ツールとして使われてきている。われわれはそのベクターの1つであるpVA891を用いてS. mutansにランダム変異導入し, この菌のグルカン依存性凝集に関与する遺伝子をクローニングするため, この凝集を起こさない変異株を分離してきた。Sau3AIで完全消化したホストDNAフラグメントを含むpVA891のホスト染色体への挿入は, キャンベル様機構による相同組換えにより起こる。このタイプのプラスミッドインテグレーションは, 挿入されたpVA891の両端に組換えを起こした相同領域の反復配列が生じるはずである。しかし, われわれの分離した変異株の多くはそのような反復配列を持っておらず, 染色体の再配列が起きているようであった。その1例として, われわれがすでにクローニングした細胞結合性グルカン結合蛋白質をコードしているgbpC遺伝子は, それらの変異株の1つにおける欠失染色体領域で同定された。一方, 他の多数のグルカン依存性凝集を示さない変異株はインタクトなgbpC遺伝子を保持しており, 染色体のかなり大きな領域に部分重複が認められた。それらの部分重複変異株の染色体の解析に基づき, それらの変異株における欠失や重複はキャンベル様機構による複数のpVA891のインテグレーション後, それら2つのベクター塩基配列を介した不等交叉により生じたものであると, われわれは提起する。

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© Japanese Association for Oral Biology
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