歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
歯肉付着上皮支配神経終末におけるNa+, K+-ATPaseの局在と同神経支配の種普遍性に関する免疫組織化学的研究
亀谷 琢也
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1999 年 41 巻 1 号 p. 69-80

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抄録

ラット歯肉付着上皮に分布する抗CGRP陽性神経線維は三叉神経節由来の知覚神経であるといわれているが, その性質や機能についてはいまだ不明な点が多い. また, 付着上皮の密な神経支配が種を越えて一般的に認められる現象か否かについても不明である. 最近, ほとんどすべての末梢知覚神経終末の軸索形質膜にはNa+, K+-ATPaseの強い酵素活性が存在することが明らかにされている. そこで今回, ラットを含む数種の齧歯類から歯肉を含む下顎臼歯部歯周組織を採取し, 抗-ラットNa+, K+-ATPase (Na+-pump) 1subunit, 抗-ラットcalcitonin gene-related peptide (CGRP) および抗-ヒトprotein gene product 9.5 (PGP 9.5) の各種抗体を用いて免疫組織化学的に支配神経終末の染色性を比較観察した. さらに, サルとイヌの歯肉についても同様の観察を行い, 付着上皮の神経支配が一般的かどうかについて検討した. その結果, 齧歯類では種を問わず口腔粘膜部の自由終末, 単純小体, メルケル細胞-神経複合体の終末や歯根膜のルフィニ小体などの知覚神経終末が, PGP 9.5抗体およびNa+, K+-ATPase抗体に強陽性を示すが, CGRP抗体には陰性であった. これに対し, 歯肉付着上皮に豊富に分布する神経線維はPGP 9.5抗体およびCGRP抗体に陽性を示したが, Na+, K+-ATPase抗体には陰性であり, 付着上皮支配神経の軸索終末は体性感覚性知覚受容終末とは異なる性質を有することが判明した.
一方, サルとイヌの歯肉口腔粘膜部にはPGP 9.5抗体やCGRP抗体に陽性を示す神経線維が認められたが, 付着上皮にはこれらの抗体に陽性を示す線維は全く観察されなかった. このことから, 付着上皮における稠密な神経支配は齧歯類に特異的な現象である可能性が高いと考えられた.

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