歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
ラット歯髄組織アルカリ性ホスファターゼの精製
戸円 智幸橋本 修一
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1999 年 41 巻 3 号 p. 219-234

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抄録

ラット切歯歯髄組織 (4.5g) よりアルカリ性ホスファターゼ (EC3.1.3.1) を精製した. 歯髄組織中のアルカリ性ホスファターゼは, n-ブタノールで抽出後, DEAE-Sepharose CL-6B, Concanavalin A-Sepharose, Sephacryl S-300 HRおよびL-Histidyldiazobenzylphosphonic Acid Agaroseの順にカラムクロマトグラフィーを行った. 酵素は最終的に約95倍に濃縮され, 回収率は15%であった. 酵素の比活性は, p-ニトロフェニルリン酸を基質とした時, 1, 425U/mg proteinであった.
精製したアルカリ性ホスファターゼは, β-メルカプトエタノール無添加で加熱処理を行わない非還元条件と5%β-メルカプトエタノールを添加し加熱処理を行った還元条件下でSDS-PAGEを行い, 酵素の分子種について解析した. 非還元条件下でこの精製酵素は, 蛋白質の銀染色および5-ブロモ-3-インドリルリン酸p-トルイジン塩を基質とした酵素の活性染色いずれの方法を用いても155kに相当する分子量を有することがわかった. 一方, ラット歯髄組織n-ブタノール抽出物中のアルカリ性ホスファターゼ活性は, 非還元条件下のSDS-PAGEで155kに加えて130kにも酵素の活性バンドが認められた. しかし還元条件下でのSDS-PAGEでは, 77kに相当するバンドのみが検出された. これらの結果から, ラット歯髄組織アルカリ性ホスファターゼは, 分子量が155kであり, 77kの二量体で構成されていることが明らかになった.
また同じ方法を用いてブタ歯髄組織, ラット骨髄, ラット腎臓およびマウス骨芽細胞様細胞株 (MC3T3-E1) よりアルカリ性ホスファターゼを精製したところ分子量は, それぞれ, 185, 155, 158および157kであった.

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