抄録
総合診療科には精神疾患を伴うFD患者が多く受診するため,われわれはその臨床的特徴の把握を試みた。当科と心療科の両方を受診した精神疾患を伴うローマIIIのFD患者29例(男性9例,女性20例,中央値;38歳)を対象とした。方法は胃十二指腸運動機能検査を超音波法の4つの項目で評価し,腹部症状やうつと不安は自己記入式質問票(GSRS,HADS)を用いて評価した。【結果】精神疾患は適応障害7例,抑うつ障害5例,不安障害とパニック障害7例,身体症状症5例,双極性障害,統合失調症,神経発達障害,強迫性障害,摂食障害が各1例であった。GSRSの腹痛尺度は3.19,消化不良尺度は2.53と通常のFDより高値となり,HADSの異常は21例中10例に存在した。運動機能異常は29例中26例(89.7%)に存在し,近位胃拡張率低下が16例(55.2%)で最多であり,胃排出率低下は9例(31.0%)であった。