抄録
固体酸触媒の表面酸性度, 酸強度分布測定法に関しては, 今まで数多くの報告がなされてきた1)。特に微少熱量計を用いた塩基性ガスの微分吸着熱の測定は触媒表面酸サイトのエネルギー分布を評価するうえで最良の方法の一つである2)~6),11)。本報では, FCC触媒として用いられるシリカ-アルミナ, ゼオライト系シリカ-アルミナの各フレッシュ, スチーミング処理試料, およびシリカ, アルミナ, ナトリウム被毒シリカ-アルミナ (Table 1) へのアンモニアガスの微分吸着熱を測定し, 得られた酸量, 酸強度分布をクメン分解活性と対応させ, 表面酸性質の考察を行った。
各固体酸触媒のアンモニアガス吸着熱は25°Cで測定した。シリカ-アルミナ, ゼオライト系シリカ-アルミナ各フレッシュ触媒は初期吸着熱約 160kJ/mol と非常に強い酸点5)を有している。しかしいずれもスチーミング処理により, 吸着熱120kJ/mol 以上の強酸点は消失し (Figs. 1, 3), さらに酸密度 (meq/m2×103) は約1/2に減少した (Table 2)。一方スチーミング処理による酸強度分布の極大, 極小を与える位置の相対的な移行は認められなかった (Figs. 2, 4)。アルミナにはブレンステッド酸が存在しないため350°Cでのクメン分解活性は示さなかったが (Table 3), アンモニアガス吸着熱より求められた酸量はf-SA-13より大きな値を与えた (Table 2)。シリカ-アルミナの酸点のNaイオンによる被毒は, 吸着熱95~105kJ/mol の酸点の消失をもたらしたが, 109kJ/mol 以上の強酸点は顕著な影響を受けず (Fig. 5) その酸量はスチーミング処理触媒より大きな値を有した (Table 2)。一方クメン分解活性はほとんど消失しておりNaイオンによるブレンステッド酸の優先的被毒が起こっていることがわかる10)。シリカ-アルミナのクメン分解活性はアンモニア吸着熱70kJ/mol以上の酸点の酸量と直線関係を有した(Fig. 6)。またゼオライト系シリカ-アルミナはシリカ-アルミナより非常に高い活性を与え, ゼオライト特有の細孔構造および表面酸特性が関与しているものと思われる。スチーミング処理試料でもゼオライト混合の効果は十分認められた (Fig. 6)。
以前報告した酸強度表示法としてのアンモニアガス吸着熱q(kJ/mol) とアミン滴定法におけるpKaの対応性から11), クメン分解に有効な酸点の酸強度 (q≧70kJ/mol) は, 硫酸60wt%の溶液に相当することがわかった。
以上のように塩基性ガスの微分吸着熱より得られた酸量, 酸強度分布は, 十分触媒活性と対応するものであり, またFCC触媒の活性を熱測定の結果から評価しうることがわかった。さらにこれらの結果は, 種々の異なる酸強度で促進される触媒反応の有効酸点の数を微分吸着熱曲線からより明確に評価し得ることを示すものである。