石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
含硫黄金属錯体によるキュメンハイドロパーオキサイドの分解反応
大勝 靖一吉川 和美長 哲郎
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1980 年 23 巻 1 号 p. 16-20

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抄録
ある種の含硫黄金属錯体は酸化防止能力のあることが知られている。しかしその酸化防止の機構については不明な点が多い。本報文では, 著者らの合成した新しい金属錯体 [Eqs. (1), (II)] を用いてキュメンハイドロパーオキサイドの分解反応を行い, 酸化防止機構に関して検討を加えた。
新しい金属錯体, すなわちフェノール性残基を含むキレート配位子が結合した金属錯体のハイドロパーオキサイド分解活性は, フェノール性残基によって影響されなかった。Tables 1, 2 には, 種々の金属錯体による分解反応の動力学的検討の結果が示されている。反応は金属錯体およびハイドロパーオキサイドのそれぞれに関し1次に依存することがわかった。
分解反応をESRで測定することによって追跡すると, Table 3, Fig. 3に示すように, 反応がキュメンハイドロパーオキサイドのホモリチックな分解を含んでいることが示唆された。このホモリチックな分解は, 電荷移動およびレドックス反応機構によって説明でき, 金属錯体は最終的に硫酸塩となることが判明した。
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