石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
担持溶融塩化亜鉛触媒 (第3報)
反応時間による水素化分解活性の変化
森田 幹雄広沢 邦男佐藤 俊夫大内 公耳
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1980 年 23 巻 2 号 p. 103-109

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抄録

既報の如く, 担持溶融塩化亜鉛触媒はアントラセンのみならず石炭分解抽出物の水素化分解にも効果的に作用することが明らかになったので, 本研究では, N631-HN と Neobead-C 担体に担持した塩化亜鉛触媒の活性変化をアントラセンの水素化分解をモデル反応として, 回分実験の繰返し試験によって比較検討した。
N 631-HN 担体単独の触媒活性は, 反応時間とともに顕著に減少し (Table 1(a)), 炭素質の沈着とともに触媒表面積の大幅な減少が確認された (Table 2)。これら沈着炭素質を燃焼除去すると, 表面積や分解活性が回復することから (Table 3) 本実験においても固体表面への炭素質の沈着が活性低下の一因となることが明らかとなった。
塩化亜鉛を担持すると, アントラセンの水素化分解に対する分解活性は, 担体単独の場合よりもその低下が緩慢になった (Table 1 (b)),(c),(d),(e)。同じく炭素質の沈着があることから, これが活性低下の原因となっている。しかし, 炭素質燃焼除去後も表面積は回復せず(Table 2) 分解活性も回復しない (Table 3)。さらには, 酸洗いによっても亜鉛の除去が困難であることや固体表面水酸基の変化から (Fig. 1), 亜鉛イオンによる担体活性点の被毒や担持塩化亜鉛による固体細孔構造の不可逆的変化が示唆された。
以上は, 担体側からの活性低下の原因であるが, 担持体塩化亜鉛側からの活性低下には, 生成物への溶解や揮発による固体表面の塩化亜鉛濃度の低下が要因として示される。熱天びんによると, 塩化亜鉛の蒸発速度は担持量や担体の種類には影響されず, 処理温度に依存することがわかった (Fig. 2)。
石炭抽出物に対する担持溶融塩化亜鉛触媒の分解活性は, 主に塩化亜鉛の分解活性に依存しているために, 繰返し試験した反応時間内ではほとんど活性低下は観察されなかった (Table 4)。

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